* * *

 僕は徐々にヴァイオリニストに戻るため、そして一華に誇れる演奏をするため、今日も音楽室でヴァイオリンに向き合っている。きぃっと扉の開く音が響いて、振り返ると、そこにいたのは……。



「おかえり。僕が見つけるはずだったのに、また見つけられちゃったね」


「いやぁ、世界一きれいな音色が聞こえてきちゃったから」


 自然と引き寄せられるようにお互いに歩み寄る僕たちの姿を、夕陽がキラキラと照らし続けていた。

(了)