* * *
その日の放課後も音楽室にいて、クララとローベルト・シューマンの『トロイメライ』を連弾して遊んでいたら、ピアノの動画をアップしているSNSに一件のDM通知がきた。
「凛大朗のファンから?」なんて、無邪気な顔でからかうようにして僕のスマホをのぞき見ようとするクララに「ひどいピアノだ、っていう批判かもよ」と僕もおどけるけれど、メッセージを送ってきた相手のSNSのアイコンを見て僕は固まった。クララの顔とそっくりだったから。というか、ぱっちりとした二重も、小さな鼻も、ぷっくりとした唇も均整の取れた配置の顔のパーツが全く一緒だ。「どういう、こと?」画面を見ながら、かすれた声を出す僕に続き、クララも窓に映る自分の顔と見比べながら「それ……私?」と困惑した様子を見せる。恐る恐る画面をタッチして通知を開いてみると、そこには「交通事故に遭って昏睡状態にある双子の妹が、あなたの奏でるピアノの音だけには反応を示します。どうか、もう少し更新頻度を上げてもらえないでしょうか?」とメッセージが記されていた。
「交通事故? 昏睡状態? 私、幽霊じゃないの……?」戸惑うクララに対し、「返事してみるよ。出来たら、この双葉っていう子にも会ってくる」そう力強く言ってみたけれど、僕もひどく混乱していた。小刻みに震える手でスマホを操作し、返信すると、すぐに返事がきた。偶然か必然か、近くに住んでいるので明日にでも会いたい、と。クララとの穏やかで幸せな日々が終わりを迎えるかもしれない。ふと、そんな予感がした。
その日の放課後も音楽室にいて、クララとローベルト・シューマンの『トロイメライ』を連弾して遊んでいたら、ピアノの動画をアップしているSNSに一件のDM通知がきた。
「凛大朗のファンから?」なんて、無邪気な顔でからかうようにして僕のスマホをのぞき見ようとするクララに「ひどいピアノだ、っていう批判かもよ」と僕もおどけるけれど、メッセージを送ってきた相手のSNSのアイコンを見て僕は固まった。クララの顔とそっくりだったから。というか、ぱっちりとした二重も、小さな鼻も、ぷっくりとした唇も均整の取れた配置の顔のパーツが全く一緒だ。「どういう、こと?」画面を見ながら、かすれた声を出す僕に続き、クララも窓に映る自分の顔と見比べながら「それ……私?」と困惑した様子を見せる。恐る恐る画面をタッチして通知を開いてみると、そこには「交通事故に遭って昏睡状態にある双子の妹が、あなたの奏でるピアノの音だけには反応を示します。どうか、もう少し更新頻度を上げてもらえないでしょうか?」とメッセージが記されていた。
「交通事故? 昏睡状態? 私、幽霊じゃないの……?」戸惑うクララに対し、「返事してみるよ。出来たら、この双葉っていう子にも会ってくる」そう力強く言ってみたけれど、僕もひどく混乱していた。小刻みに震える手でスマホを操作し、返信すると、すぐに返事がきた。偶然か必然か、近くに住んでいるので明日にでも会いたい、と。クララとの穏やかで幸せな日々が終わりを迎えるかもしれない。ふと、そんな予感がした。