「だったら教えてくれる?俺のこと。…それと、俺たちのこと」

「…え?わたしが?」

「うん。さっき会ったとき、記憶はないのに、なぜか初めて会った気がしなかったから」


そう言って、陸斗は少しだけ微笑んだ。



陸斗がわたしを忘れてしまっても、わたしが何度だって聞かせよう。

陸斗がわたしの命を延ばしてくれたおかげで、わたしは陸斗といやというほどに語り合える長い長い時間(とき)を手にすることができたから。


それだけ語り明かしても、わたしのことを思い出せなくたっていい。

そうなったときは、またひとつずつ思い出をつくっていけばいいのだから。


そして、わたしはまたキミのことを好きになるだろう。

キミがわたしへの恋心を失くしてしまっても、またいっしょに始めよう。


そう。

もう一度、キミと初めての恋をしよう。





『もう一度、キミと初めての恋をしよう』【完】