もしかして…陸斗のこと?


陸斗は、わたしに関する記憶を差し出すかわりに、わたしの命を延ばすことを選んだの…?


だから、絶対に治るはずのない病気が完治して――。

今、わたしはここにいる。


「…バカだよ。ほんと…なにしてるの」


わたしの命が延びたって、陸斗がわたしを忘れてしまったら…もう意味なんてないのに。

と同時に、別れてからも陸斗にとっての『一番大切に想っている人』がわたしだったということに涙があふれた。


うれしいのか、悲しいのか…わからない。


陸斗の家を出てすぐのところでうずくまって泣いていると、ふと後ろに気配を感じた。


おそるおそる見上げると、…それは陸斗。


「…あ、ご…ごめんなさい。こんなところにいたら…迷惑ですよね」


…恥ずかしい。

普通に泣いてるところ…見られた。