でも、目覚めるたびにそれは夢だとわかり、そのたびに何度も落胆した。


だけど、これは本当に本当に…夢じゃない。


そういえば、先生は1週間前からよくなったと言っていた。

1週間前といえば、あの死神の夢を見たときだ。


陸斗の記憶と引き換えにわたしの命を延ばすと言っていたけど――。

そんなことをしなくたって、わたしはこうして病に打ち勝つことができた。


あんな契約、交わさなくてよかった。

まあ、所詮はただの夢だしね。


その後、わたしは晴れて退院した。

数ヶ月ぶりの我が家。


「ムギ〜!会いたかったよ〜!」


ポメラニアンのムギが出迎えてくれた。


わたしが病気とわかってから、お父さんからもお母さんからも笑顔が消えた。

わたしを励まそうと笑ってくれるも、その表情はいつもどこかつらそうで――。