“それ”が訪れたのは奇しくも俺たちがファーストキスをした日のことだった。昼休み、アトリエでいつものように優絵の絵を描いて、ひと段落したところでそれを片付ける。静寂の中、目と目があってどちらからともなく唇を重ね合わせた。
ほんの一刹那、唇を触れ合わせるだけのキス。それでも、俺たちはその熱に浮かされていた。ぼーっとした頭で手を繋いだまま外に出ると、キャンパス中が大パニックになっていた。
あまりの騒動に俺たちは我に返った。「3月31日に隕石が衝突し、人類の99.99%が死亡確実」のネットニュースを各国首脳が発表し、世界中が阿鼻叫喚となっていた。
謝る俺の頭を優絵が撫でる。
「私は幸せだったけどなー。思い出作ろうって遊園地行ったり水族館行ったりさ」
優絵が無邪気な笑顔で、二人の思い出を羅列していく。俺も大切な思い出を一緒に振り返る。
「季節外れの花火やって、優絵を描いた絵が賞とって……」
「遊園地で迷子になったちっちゃい男の子を迷子センターに連れて行ってあげたじゃん? 望、いいお兄ちゃん通り越して優しいパパって感じだったのにさ、その子が『お姉ちゃん綺麗結婚して』って言った途端独占欲剥き出しでさ。ムキになってる望も可愛かったよー」
俺は子供が好きだ。純粋で汚れを知らず、心を癒してくれるからだ。しかし、いくら子供の言うことだからと言っても看過できないことはある。大人げないと言われようとも、優絵だけは譲れない。
「だって、嫌じゃん。俺の優絵なのに」
俺も優絵にあてられて随分と丸くなったものだ。優絵と出会う前の俺だったら、プライドが邪魔して絶対にこんなことは言えなかっただろう。俺を変えたのは優絵だ。いつになく素直な俺に優絵が微笑む。そんな優絵が愛おしくて俺も笑う。
ほんの一刹那、唇を触れ合わせるだけのキス。それでも、俺たちはその熱に浮かされていた。ぼーっとした頭で手を繋いだまま外に出ると、キャンパス中が大パニックになっていた。
あまりの騒動に俺たちは我に返った。「3月31日に隕石が衝突し、人類の99.99%が死亡確実」のネットニュースを各国首脳が発表し、世界中が阿鼻叫喚となっていた。
謝る俺の頭を優絵が撫でる。
「私は幸せだったけどなー。思い出作ろうって遊園地行ったり水族館行ったりさ」
優絵が無邪気な笑顔で、二人の思い出を羅列していく。俺も大切な思い出を一緒に振り返る。
「季節外れの花火やって、優絵を描いた絵が賞とって……」
「遊園地で迷子になったちっちゃい男の子を迷子センターに連れて行ってあげたじゃん? 望、いいお兄ちゃん通り越して優しいパパって感じだったのにさ、その子が『お姉ちゃん綺麗結婚して』って言った途端独占欲剥き出しでさ。ムキになってる望も可愛かったよー」
俺は子供が好きだ。純粋で汚れを知らず、心を癒してくれるからだ。しかし、いくら子供の言うことだからと言っても看過できないことはある。大人げないと言われようとも、優絵だけは譲れない。
「だって、嫌じゃん。俺の優絵なのに」
俺も優絵にあてられて随分と丸くなったものだ。優絵と出会う前の俺だったら、プライドが邪魔して絶対にこんなことは言えなかっただろう。俺を変えたのは優絵だ。いつになく素直な俺に優絵が微笑む。そんな優絵が愛おしくて俺も笑う。