——私には感情がない。

 だけれど、飼い主の幸せそうな表情を見ると、胸の中心あたりがじんわりと熱を帯びる。
 世界が明るくなり、やさしい気持ちで満たされ、ずっとそばにいたいと思ってしまう。
 この感覚を名付けるとしたら、なんだろう。
 うれしい。
 ここちよい。
 あいしている。
 人間でいう、そういうものなのかもしれない。
 感情がない私にも、いつからか感情が生まれていた。
 飼い主たちを守るうちに、そばにいるうちに、私にも心というものが生まれていた。



 それはとてもとても、不思議なことだと思う。