おおっ! なんと爽快な解釈! 何かが降臨し、練習する声にメリハリがついてきたような気がします。空の高さからすれば、わたしの羞恥心など取りに足らないものなのでしょう。
「質問事項を想定してまとめたんですけれど、何度覚えても忘れてしまうんです」
「十分な睡眠を挟んで前後で反復すれば記憶に定着するぞ。だから亥の刻までには床に就くのじゃ、中途半端な寝落ちは大罪じゃぞ!」
助言を実践してみると、質問事項も回答もしっかり記憶に残ります。覚えているつもりで覚えていない、そんな単純な自分に対する誤解を、にきび様はたやすく気づかせてくれました。
わたしはにきび様の言うことを信じて必死に練習をしました。ビデオで自分自身のプレゼンを撮影し、言葉遣いや抑揚、そして視線の送り方など、さまざまなポイントをチェックしました。にきび様も一緒に見てアドバイスをくださいました。
学生時代に経験したことのなかった、情報を他人に伝えるという社会人のスキル。この修練がいかに重要なものか、わたしはようやっと気づくことになりました。
「よし、まことによい調子じゃ。それでは明日、高坂殿との最後の打ち合わせじゃのう」
「はいっ!」
わたしは少しだけ、高坂先輩との時間が待ち遠しいと思えるようになりました。
★
「――したがって、多くの便秘薬が利用可能となっていますが、『モーデルBV』が最も適切な治療薬になり得る患者様もいらっしゃるのではないかと考えています。我々の新薬がそのような患者様の日常生活の快適さに貢献できれば幸いでに存じます」
両腕を組んでプレゼンテーションを聴き終えた高坂先輩は、納得した様子で首を縦に振りました。
「進歩したな、当初と比べると別人のようだ」
そう言ってわたしを正視します。わたしはつい目をそらしそうになりますが、それでは気持ちが負けてしまうと思い、高坂先輩を見つめ返します。
今までは気づかなかったのですが、高坂先輩の目は横から見ると切れ長で恐ろしく、でも正面から見ると澄んでいて意外に優しく見えるのです。わたしの抱く当初の恐怖心も和らいできたような気がします。
「だいぶ流暢にプレゼンテーションできている。スライドの見栄えも申し分ない。そして何より伝えるべきことを的確に伝えられている」
「質問事項を想定してまとめたんですけれど、何度覚えても忘れてしまうんです」
「十分な睡眠を挟んで前後で反復すれば記憶に定着するぞ。だから亥の刻までには床に就くのじゃ、中途半端な寝落ちは大罪じゃぞ!」
助言を実践してみると、質問事項も回答もしっかり記憶に残ります。覚えているつもりで覚えていない、そんな単純な自分に対する誤解を、にきび様はたやすく気づかせてくれました。
わたしはにきび様の言うことを信じて必死に練習をしました。ビデオで自分自身のプレゼンを撮影し、言葉遣いや抑揚、そして視線の送り方など、さまざまなポイントをチェックしました。にきび様も一緒に見てアドバイスをくださいました。
学生時代に経験したことのなかった、情報を他人に伝えるという社会人のスキル。この修練がいかに重要なものか、わたしはようやっと気づくことになりました。
「よし、まことによい調子じゃ。それでは明日、高坂殿との最後の打ち合わせじゃのう」
「はいっ!」
わたしは少しだけ、高坂先輩との時間が待ち遠しいと思えるようになりました。
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「――したがって、多くの便秘薬が利用可能となっていますが、『モーデルBV』が最も適切な治療薬になり得る患者様もいらっしゃるのではないかと考えています。我々の新薬がそのような患者様の日常生活の快適さに貢献できれば幸いでに存じます」
両腕を組んでプレゼンテーションを聴き終えた高坂先輩は、納得した様子で首を縦に振りました。
「進歩したな、当初と比べると別人のようだ」
そう言ってわたしを正視します。わたしはつい目をそらしそうになりますが、それでは気持ちが負けてしまうと思い、高坂先輩を見つめ返します。
今までは気づかなかったのですが、高坂先輩の目は横から見ると切れ長で恐ろしく、でも正面から見ると澄んでいて意外に優しく見えるのです。わたしの抱く当初の恐怖心も和らいできたような気がします。
「だいぶ流暢にプレゼンテーションできている。スライドの見栄えも申し分ない。そして何より伝えるべきことを的確に伝えられている」