数日後。秋晴れのこの日は八神くんの告別式が行われ、参列を終えた私と汐野くんは二人並んで帰路につく。

「朔夜、最期は眠るように旅立ったらしいよ」
「そっか。苦しまずに済んだのなら良かった」

だって八神くんはこれまで、私が想像もつかないくらいにもう十分苦しんだはずだから。

「ねぇ、汐野くん。あの日私に電話をくれてありがとう。あのとき八神くんに会えてなかったら私、一生後悔するところだった」
「ううん。俺はただ、朔夜の友人として当然のことをしただけだから……あっ」

私と汐野くんが歩いていると、前から金髪の同世代くらいの男の子が歩いてくる。その人とすれ違う際に私と汐野くんは、金髪の彼のことをじっと見てしまう。

「……何ですか?」

訝しげに私たちのほうを見る、金髪の彼。

「ご、ごめんなさい」
「すいません。友人に似ていたもので」

私と汐野くんは、慌てて彼に謝る。

八神くんはもういないって、頭では分かっているのに。似たような人を街で見かけると、もしかしてって思ってしまう。

「八神くんに会いたいな」

あの日八神くんが病室で初めて呼んでくれた『梨央ちゃん』が、ずっと耳から離れない。

「八神くん、無事に天国へ行けたかな」

彼のことを思うとまたすぐに目頭が熱くなり、涙がつっと頬を伝い落ちる。

するとそのとき、少し冷たい風が私の頬をふわりと掠める。

「八神くん?」

それはまるで彼に『泣かないで』と言われているようで。

「もしかして、見ていてくれてるの?」

尋ねても、八神くんからの返事はないけれど。

「そうだよね。私がいつまでも泣いていたら、八神くんもきっと心配して天国へいけなくなっちゃうね」
「ああ。朔夜、朝井さんの笑顔を見てると元気が出るってよく言ってたからなぁ」
「そうだったんだ」

八神くん。病室では言えなかったけど、私のことを好きになってくれてありがとう。

あのとき八神くんと約束したから。キミが好きだと言ってくれた笑顔でいられるように、私……頑張るから。これからもずっと、見守っていてね。

私はどこまでも続く青空を見つめ、そっと微笑んだ。