少し遠くのベンチにザックは座っていた。それを菜穂子は見つけた。真夜中というのもあって周りに人はいない。

 ザックは腰掛けたまま、俯いている。菜穂子は近づいて声をかける。
「まさか……ザック……私が無茶振りしたから?」
 と喋ってもザックは答えない。

「もう私はあんな夫は捨ててあなたと一緒にいたいと思ったのに。死んでしまったの? 実は怖くなかったのもね、一目惚れしたからなの……怪人に一目惚れって、変でしょ?」
 菜穂子は一人笑う。

「あなたも失って……はぁ、私どうすればいいの?」

 涙が溢れる。

 すると死んだと思ったザックが動いた。

「えっ……」
 菜穂子は驚いた。少しホッとした。
「……?」


 ザックが大きな口を開いた。

「その不幸、養分としていただきますっ!!!!」

 ザックは待っていた。
 菜穂子の不幸のミルフィーユをわざと積みに積み重ねて腹ペコな自分のお腹にたんまりと味わうために。


 終