その頃病室の中では医師と菜穂子がいた。
 明日の朝、また診察をする。どうやら陣痛でなくてお腹の張りだったようだ。歩き過ぎが原因だったらしい。
 医師はもう寝なさい、と声をかけられ菜穂子は頷く。しかしそう簡単に眠れなかった。

「……怪人さんに無茶振りしちゃったかなー」
 ふとザックのことを思い出す。実はフラフラと夜道の中、死を覚悟していた。もう一人、絶望を感じていた。でもザックと出会い、なおかつお腹の中の子の存在……菜穂子を気持ちをとどめた。

「菜穂子ちゃん!」
「その声は……」
 ガラッとドアが開いた。そこには5年前みたいに丸々肥えた真司が立っていた。男にとっては肥えていたからの姿は嫌だったせいかあまり浮かない顔をしているように見える。
 蒸発する前はもう少し痩せていたが昔のような姿に戻っている彼を菜穂子は見てびっくりした。

「菜穂子ちゃーん!! 僕がいけなかったんだ、ごめんなさい」
「あなた! まさか……怪人さんが?」
 真司が頷く。
「怪人さんはどこ?!」
「えっ……そ、外に! どいて!」
「菜穂子ちゃん、安静にしてないと」
 菜穂子は点滴を外して外に出ようとする。

「あんたみたいな浮気者、信じられないっ!」
「菜穂子ちゃーん!」

 とドアを閉めて出ていった。