そしてザックはとある夜の繁華街についた。
「ここか、どこにいるんだ?」
 キョロキョロ見渡すがカップルが何組か腕を組んで歩いている。

 するととある二人が目の前をよぎる。
「ねぇーここのホテルがいいな」
「ええっ、ちょっと高いよ」
「いいじゃーん、素敵な部屋よ」
 ザックは察知した。

「見つけたぞぉおおおおお!」
「うわぁああああ化け物だ!」
 男の方……菜穂子の夫、真司は腰を抜かした。
「やだぁ、この辺のキャバクラの客引きの着ぐるみじゃないの?」
 女は顔を歪めてる。

「化け物でも着ぐるみでもない! 怪人だぁあああああ!」
 そう叫ぶと周りのカップルたちは逃げ惑う。二人も逃げようとしたがザックが二人を捕まえる。
「人の男を唆して!」
「唆してないもんーだってー」
「言い訳するな!!!」
 ザックは口をシャー!!! と開ける。ザックは一目見てその女の違和感を感じた。ザックを見ても何事もないように扱う。

「しかも人間に化けて!」
「ちっ、同じ怪人同士同業者はわかってしまうか!」
 と舌打ちした女。そう、菜穂子の親友の正体は……。


「男たらし怪人マジャールだ!」
 ザックが言う前に聞き覚えのある声がそう答えた。

「誰だっ!」
 振り返るとこれまた見覚えのある二人。

「ヨナオシジャー!」
 そして目の前にいた女は怪人マジャールの姿になった。とてもおぞましい姿に真司はガクガクと震える。
「えっ、なになに?」
「そっちの狼みたいなやつは弱い心の持ち主を、そっちの女狐みたいなやつは男の性欲を養分として喰って強くなる怪人なんだ!」
 ヨナオシジャーがそう解説する。

「そんなぁ、僕ら会って5年目だろ?」
 するとザックは写真を真司に見せた。
「この頃に比べてだいぶ痩せたな。お前は確実に養分吸われてるな、この醜い女狐に」
「……よ、養分」

 確かに一般男性に比べると痩せ細っている真司。
「妻よりも気が利いてセクシーで……誘いに拒否をしないいい女だったのに。そういうことだったのか!」

 その真司の言葉にザックはため息をついた。
「菜穂子という素敵な妻がいるのに……いや、妻と子供が」
「え? 子供?!」
「知らなかったのか……」
「知りませんでした……ううう」
 泣き崩れる真司。
「そこで泣くな! お前は父親になるんだろ! もうすぐ生まれる、今から行くぞ!」
「行く?! えっ!」
 ザックは真司を掴んで叫んだ。

「テレポーテーション!!!」

 二人はその場から消えた。
「くそ! ザックめ!」
 マジャールは追いかけられなかった。しかしそこにはヨナオシジャーが残っていた。

「ちょうどよかった! 力は有り余っている」
「一発で仕留めるぞ!」
 ヨナオシジャーは二人がかりでマジャールに攻撃した。

「いやぁあああああああああ!!!」
 マジャールの叫び声は夜の繁華街に響いた。