潮騒部。その名前だけでは全貌が見えない、言ってしまえば怪しい部活。
しかし、部員には見知った顔ばかりで、1日とはいえ接してきた感触から、その部の正当性が顔を覗かせる。
「さぁさぁ、そんなところでボーッと突っ立ってないで、さっさと中に入ってこいよ」
ここまで来て帰るなんて言う選択肢が僕にあるわけもなく、ナルに言われるがまま入室する。
扉を閉めてあらためて部員の方へ向き直ると、なんとも無邪気な笑みを浮かべていたナルは、ひとつコホンと咳払いをすると口を開いた。
「じゃあ、早速部員の紹介と行こうか!っても俺たち3人はもう必要ないから、1人だけだけど」
そういって手の平で指したのは、椿の隣、扉側に座っていた茶髪でポニーテールを靡かせる女子生徒だった。
その女子生徒の顔を見てまず浮かんだ印象が、「見覚えがある」といった、困惑の含むものだった。
しかし、その疑問は次のナルの言葉によってすぐに解明された。
「彼女は雨宮七海。学年は俺たちより1個下の1年生だな。んで、もう分かったと思うけど、椿の実の妹さんな」
七海はナルの紹介の言葉を受けて僕をまじまじと見つめてくる。
行き場を失った僕の視線は、その七海の頭上で漂っている。
それでも視界には捉えているその表情は読み取ることができる。
怒っている?とても怪訝そうな顔をしている。
それもそうだろう。急にどこの馬の骨だか、魚のはらわただか、大掃除中にたまたま見つけた何使うかわからない謎のケーブルだか分からない奴が、ずけずけと部室に入り込んできたのだ。
いや、入り込んだのは部室だけではなく、この4人の作り上げてきた関係にもだ。
新しいものに恐怖心を抱くのはきっと等身大だろうと思う。
「あの、えっと。ま、まだ僕はこの部活に入るかどうかなんて分からないから。そのとりあえず、見学ということだから」
だからこそ僕の出したその答えは、波風のたてないどっち付かずの言葉だった。
潮騒部に波風たてずに。我ながら少しうまい事を言ったものだと思う。
「え?そ、そうなんですか?てっきり………。早とちりしてごめんなさい」
そしてその僕の言葉に反応したのは、僕が特に気遣ったナル、美琴、七海の3人ではなく、以外にも僕が来てから1度目を合わせてくれない椿だった。
「あ、いや。その期待させてごめん。でも、そもそも部活をやるかも迷ってるところで、ナルに声をかけてもらったから、これいいきっかけになるかも、とは思ったんだけど、その………」
予想外の反応に戸惑い次々と言葉を紡いでしまう。
頭で考えよりも早く紡がれるその言葉たちのせいで、一旦落胆していたナルの目に輝きが戻っていくのが確認できる。
「だよな!きっかけなんてなんでもいいよな!折角きたんだから、少しはゆっくりしていけよ!お菓子もコーヒーも紅茶も緑茶もあるし、ジュースだって、自販機までパシられる覚悟はあるからよ!!」
そんな前のめりなナルの提案に圧されるようにして、窓際のお誕生日席に追いやられる。
それに便乗したようにそそくさとティーパーティーの準備をはじめる美琴。
「ごめんナナちゃん。これ運んでもらえるかしら?」
「え?あ、うん。じゃなくて、はい。分かりました」
美琴に手伝いを催促され、渋々準備に入る七海。
ナルは堂々と僕の斜め左の席に着席して準備が終わるの待っている。
「あ、美琴ちゃん私も手伝うよ」
「ああ、いいよいいよ。もうすぐ終わりそうだし」
椿は手伝いを断られ、手持ち無沙汰でキョロキョロとしている。
まだ慣れない空気感から逃れるようにして、吹き込んでくる風に誘われるかのように窓の外を眺める。
「あ、海だ」
この学校は海岸近くに建てられていることもあり、3階まで上ってしまえばこうして海を眺める事ができた。
今まで内陸部育ちだった僕にとっては、おそらくこの町ではありふれたその景色がとても輝いて見えた。
少しだけその景色を堪能した僕は再び正面に向き直る。
そこでナルと椿の視線が僕に向けられていた事を知る。
「どうした?海なんか珍しいものでもないだろ?刹那だって、昔はこの町に住んでたわけだろ?」
「ああ。まぁうん。そうなんだけどね。正気あまりこの町の事は覚えていないんだ。あ、別に記憶喪失とか、そんな重い話ではないからね!」
ナルの問いに誤解がないように答える。
「覚えてないんだ………」
そしてその答えにポツリと反応を溢したのが椿だった。
「え?だからそんなに重い話じゃ」
「はい。準備完了よ」
伏し目がちな椿の表情から、まだ誤解が解けていないと思い再び口にした言葉を、その美琴の声がかきけしていく。
しかし、部員には見知った顔ばかりで、1日とはいえ接してきた感触から、その部の正当性が顔を覗かせる。
「さぁさぁ、そんなところでボーッと突っ立ってないで、さっさと中に入ってこいよ」
ここまで来て帰るなんて言う選択肢が僕にあるわけもなく、ナルに言われるがまま入室する。
扉を閉めてあらためて部員の方へ向き直ると、なんとも無邪気な笑みを浮かべていたナルは、ひとつコホンと咳払いをすると口を開いた。
「じゃあ、早速部員の紹介と行こうか!っても俺たち3人はもう必要ないから、1人だけだけど」
そういって手の平で指したのは、椿の隣、扉側に座っていた茶髪でポニーテールを靡かせる女子生徒だった。
その女子生徒の顔を見てまず浮かんだ印象が、「見覚えがある」といった、困惑の含むものだった。
しかし、その疑問は次のナルの言葉によってすぐに解明された。
「彼女は雨宮七海。学年は俺たちより1個下の1年生だな。んで、もう分かったと思うけど、椿の実の妹さんな」
七海はナルの紹介の言葉を受けて僕をまじまじと見つめてくる。
行き場を失った僕の視線は、その七海の頭上で漂っている。
それでも視界には捉えているその表情は読み取ることができる。
怒っている?とても怪訝そうな顔をしている。
それもそうだろう。急にどこの馬の骨だか、魚のはらわただか、大掃除中にたまたま見つけた何使うかわからない謎のケーブルだか分からない奴が、ずけずけと部室に入り込んできたのだ。
いや、入り込んだのは部室だけではなく、この4人の作り上げてきた関係にもだ。
新しいものに恐怖心を抱くのはきっと等身大だろうと思う。
「あの、えっと。ま、まだ僕はこの部活に入るかどうかなんて分からないから。そのとりあえず、見学ということだから」
だからこそ僕の出したその答えは、波風のたてないどっち付かずの言葉だった。
潮騒部に波風たてずに。我ながら少しうまい事を言ったものだと思う。
「え?そ、そうなんですか?てっきり………。早とちりしてごめんなさい」
そしてその僕の言葉に反応したのは、僕が特に気遣ったナル、美琴、七海の3人ではなく、以外にも僕が来てから1度目を合わせてくれない椿だった。
「あ、いや。その期待させてごめん。でも、そもそも部活をやるかも迷ってるところで、ナルに声をかけてもらったから、これいいきっかけになるかも、とは思ったんだけど、その………」
予想外の反応に戸惑い次々と言葉を紡いでしまう。
頭で考えよりも早く紡がれるその言葉たちのせいで、一旦落胆していたナルの目に輝きが戻っていくのが確認できる。
「だよな!きっかけなんてなんでもいいよな!折角きたんだから、少しはゆっくりしていけよ!お菓子もコーヒーも紅茶も緑茶もあるし、ジュースだって、自販機までパシられる覚悟はあるからよ!!」
そんな前のめりなナルの提案に圧されるようにして、窓際のお誕生日席に追いやられる。
それに便乗したようにそそくさとティーパーティーの準備をはじめる美琴。
「ごめんナナちゃん。これ運んでもらえるかしら?」
「え?あ、うん。じゃなくて、はい。分かりました」
美琴に手伝いを催促され、渋々準備に入る七海。
ナルは堂々と僕の斜め左の席に着席して準備が終わるの待っている。
「あ、美琴ちゃん私も手伝うよ」
「ああ、いいよいいよ。もうすぐ終わりそうだし」
椿は手伝いを断られ、手持ち無沙汰でキョロキョロとしている。
まだ慣れない空気感から逃れるようにして、吹き込んでくる風に誘われるかのように窓の外を眺める。
「あ、海だ」
この学校は海岸近くに建てられていることもあり、3階まで上ってしまえばこうして海を眺める事ができた。
今まで内陸部育ちだった僕にとっては、おそらくこの町ではありふれたその景色がとても輝いて見えた。
少しだけその景色を堪能した僕は再び正面に向き直る。
そこでナルと椿の視線が僕に向けられていた事を知る。
「どうした?海なんか珍しいものでもないだろ?刹那だって、昔はこの町に住んでたわけだろ?」
「ああ。まぁうん。そうなんだけどね。正気あまりこの町の事は覚えていないんだ。あ、別に記憶喪失とか、そんな重い話ではないからね!」
ナルの問いに誤解がないように答える。
「覚えてないんだ………」
そしてその答えにポツリと反応を溢したのが椿だった。
「え?だからそんなに重い話じゃ」
「はい。準備完了よ」
伏し目がちな椿の表情から、まだ誤解が解けていないと思い再び口にした言葉を、その美琴の声がかきけしていく。