「はじめまして!今日からお世話になります!」
ダウジングロッドのように腰を直角に曲げて誠意をしめす。
「ハッハッハ。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。この学舎ではね、生徒たちの自主性を重んじているから、まぁ、余程素行に問題がなければ、自由な校風だよ。だから、思うように、伸び伸びと生活するといい。分かったかね?」
ホワイトな校風を謳う言葉としてよく使用されている、「生徒の自主性を重んじる」は、この立浪校長の声色からは不思議と信憑性を感じる。
確かにここに来るまでの間、金髪といった派手なものはなかったが、明るい茶髪の生徒たちとも数名すれ違った。
自主性を重んじる。しかし、ある程度のラインを守って。それが生徒たちによく浸透しているということだろう。
「はい。分かりました。自分なりの楽しい学校生活を、送っていこうと思います」
その僕の返答に満足したように立浪校長は、目尻の皺をさらに細やかにして微笑む。
「それじゃあ、ホームルームまでまだ少し時間があるから、そこのドアを入った応接間で待っていてね。あとから先生が、香坂先生!!が迎えに行ってあげるから!」
弾んだ声でそう言い残すと、例によって小動物のような足取りで自席に戻っていく香坂先生。
僕は言われた通りに示されたドアを開くと、ローテーブルを挟んで並ぶソファーの一角に腰をおろしてその時を待つことにした。
どこか重厚感のある室内を見回したり、窓から朝練に励む生徒たちを眺めたりしていると、あっという間に時間が過ぎていたようだ。
コンコンと軽いノック音にその時間の訪れを知らされた僕の心臓は、自分の耳に届くほど速いテンポを刻んでいる。
「お待たせしました。じゃあ行きましょうか!大丈夫!みんないい生徒たちばかりだから、すぐに馴染めると思うよ!」
そんな僕の心境を察してたか、そう背中を支えるような言葉を僕に送ると、先導するように歩を進め始める香坂先生。
僕はその後に続くように、浮わついた足を何とか進めていく。
教室の前に立つ。定番だとここで僕は一旦待機して、先生に呼ばれたところで入室といった流れになるだろう。
しかし、それはあくまでも別次元の話だ。
香坂先生は教室に入る前一度だけこちらに振り向くと、「じゃあ行くね。落ち着いてね」と僕に気遣うと、慣れたように扉を開いて入室していく。
僕も流れるままに入室する形となったが、余計な間が無かったため、それ以上に緊張することなくすんなりと入室することができた。
教卓、香坂先生の隣に立ちクラス中を見渡す。
当たり前だが生徒の視線は僕に注目している。
「はい。皆さんおはようございます。以前話した通り、今日から新しい仲間が増えます。では、軽く自己紹介をお願いしようかな」
香坂先生は僕に視線を移してウィンクを見せる。
こんなにナチュラルにウィンクをする人は初めて見たと少し面食らってしまうが、変な間を空けるわけにもいかないため、一度息を吐いてから口をひらいた。
「はじめまして。今日からこのクラスの一員となる、保月刹那と申します。数年前までは、この町に住んでいたので、もしかしたら、僕を知っている人がいるかもしれませんが、正直、僕はよく覚えていません。ですので、また一からという気持ちで、これから学校生活に勤しんでいきたいと思うので、よろしくお願いします」
昨日の夜考えていた言葉たちを上手く紡ぐと、深く一礼をする。
それを合図にクラス中から惜しみ無い拍手が浴びせられる。
それだけで安心感が形を帯びて、僕の心にガッチリとハマるような感覚がする。
「はい!素敵な自己紹介ありがとうございます!改めてみなさんも、今日からよろしくお願いしますね。それじゃあ、保月君はあそこだね!あの、窓際の、雨宮さんの隣に着席してください」
香坂先生がピョンピョンと跳ねながら指す席を見ると、その隣の席の雨宮と呼ばれた女子生徒と目が合う。
人見知りの子なのだろうか、僕と目が合ったことに気がつくと一度驚いたような表情をして、すぐに目を逸らされてしまう。
僕も人と関わることが得意ではない方なので、その気持ちは理解することができた。
だからあまり波風立てないように軽く挨拶だけすればいいだろうと決め、その一つ空いた窓側の一番隅の席へと向かい歩を進めはじめる。
ダウジングロッドのように腰を直角に曲げて誠意をしめす。
「ハッハッハ。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。この学舎ではね、生徒たちの自主性を重んじているから、まぁ、余程素行に問題がなければ、自由な校風だよ。だから、思うように、伸び伸びと生活するといい。分かったかね?」
ホワイトな校風を謳う言葉としてよく使用されている、「生徒の自主性を重んじる」は、この立浪校長の声色からは不思議と信憑性を感じる。
確かにここに来るまでの間、金髪といった派手なものはなかったが、明るい茶髪の生徒たちとも数名すれ違った。
自主性を重んじる。しかし、ある程度のラインを守って。それが生徒たちによく浸透しているということだろう。
「はい。分かりました。自分なりの楽しい学校生活を、送っていこうと思います」
その僕の返答に満足したように立浪校長は、目尻の皺をさらに細やかにして微笑む。
「それじゃあ、ホームルームまでまだ少し時間があるから、そこのドアを入った応接間で待っていてね。あとから先生が、香坂先生!!が迎えに行ってあげるから!」
弾んだ声でそう言い残すと、例によって小動物のような足取りで自席に戻っていく香坂先生。
僕は言われた通りに示されたドアを開くと、ローテーブルを挟んで並ぶソファーの一角に腰をおろしてその時を待つことにした。
どこか重厚感のある室内を見回したり、窓から朝練に励む生徒たちを眺めたりしていると、あっという間に時間が過ぎていたようだ。
コンコンと軽いノック音にその時間の訪れを知らされた僕の心臓は、自分の耳に届くほど速いテンポを刻んでいる。
「お待たせしました。じゃあ行きましょうか!大丈夫!みんないい生徒たちばかりだから、すぐに馴染めると思うよ!」
そんな僕の心境を察してたか、そう背中を支えるような言葉を僕に送ると、先導するように歩を進め始める香坂先生。
僕はその後に続くように、浮わついた足を何とか進めていく。
教室の前に立つ。定番だとここで僕は一旦待機して、先生に呼ばれたところで入室といった流れになるだろう。
しかし、それはあくまでも別次元の話だ。
香坂先生は教室に入る前一度だけこちらに振り向くと、「じゃあ行くね。落ち着いてね」と僕に気遣うと、慣れたように扉を開いて入室していく。
僕も流れるままに入室する形となったが、余計な間が無かったため、それ以上に緊張することなくすんなりと入室することができた。
教卓、香坂先生の隣に立ちクラス中を見渡す。
当たり前だが生徒の視線は僕に注目している。
「はい。皆さんおはようございます。以前話した通り、今日から新しい仲間が増えます。では、軽く自己紹介をお願いしようかな」
香坂先生は僕に視線を移してウィンクを見せる。
こんなにナチュラルにウィンクをする人は初めて見たと少し面食らってしまうが、変な間を空けるわけにもいかないため、一度息を吐いてから口をひらいた。
「はじめまして。今日からこのクラスの一員となる、保月刹那と申します。数年前までは、この町に住んでいたので、もしかしたら、僕を知っている人がいるかもしれませんが、正直、僕はよく覚えていません。ですので、また一からという気持ちで、これから学校生活に勤しんでいきたいと思うので、よろしくお願いします」
昨日の夜考えていた言葉たちを上手く紡ぐと、深く一礼をする。
それを合図にクラス中から惜しみ無い拍手が浴びせられる。
それだけで安心感が形を帯びて、僕の心にガッチリとハマるような感覚がする。
「はい!素敵な自己紹介ありがとうございます!改めてみなさんも、今日からよろしくお願いしますね。それじゃあ、保月君はあそこだね!あの、窓際の、雨宮さんの隣に着席してください」
香坂先生がピョンピョンと跳ねながら指す席を見ると、その隣の席の雨宮と呼ばれた女子生徒と目が合う。
人見知りの子なのだろうか、僕と目が合ったことに気がつくと一度驚いたような表情をして、すぐに目を逸らされてしまう。
僕も人と関わることが得意ではない方なので、その気持ちは理解することができた。
だからあまり波風立てないように軽く挨拶だけすればいいだろうと決め、その一つ空いた窓側の一番隅の席へと向かい歩を進めはじめる。