ユウタの中学卒業の日の朝。作業着を身につけた男二人が目の前に現れた。傍らにはスーツを着た女と男、そして制服姿のユウタが並んで立っていた。
「やっとさよならね」
 晴々とした表情の女。
「ユウタも明るくなったし、これでまっとうな人生を歩めるな」
 男も嬉しそうだ。
「うん。母さん、父さん、ありがとう」
 ユウタは笑った。あの泣きそうな顔で。
 会話を聞いている間にも、私は梱包されていく。エアキャップを体に巻き付けられる。
 作業着姿の男が言った。
「横向きにしてから箱に入れよう」
「わかりました」
 もう一人が言う。そして「せーの」と掛け声をかけ、私を持ち上げた。床と平行にされる。
 すると、「足」に溜まっていた水が「頭」に流れ込んできて、私の「目」から、ひとしずくの水が落ちた。
「さよなら」
 ユウタの声がする。
 そんな顔しないで。笑って。
 絶対に届かない声。でも、もしかしたらユウタには聞こえるのではないかと念じてみる。
 顔にもエアキャップが巻きつけられる。ダンボール箱に入れられる。ユウタの表情は確認できなくなった。

 私がいくらでも身代わりになるから。負の感情は全て引き受けるから。
 笑って。幸せに、生きて。

 私は横になって梱包材を全体に纏った状態で、箱の中に詰められた。