一年ほど経ったある時、ユウタが部屋に入ってくるなり、ドアのそばで泣き崩れてしまった。
「今日がまんできなくて泣いちゃったら、先生に『ゆうたくんはいつまでもネガティブなままだね。このままだとハンザイシャになっちゃうよ』って言われちゃった。ネガティブな人は将来、ヒトゴロシとかドロボウとかのハンザイシャになるんだって。ぼく、ハンザイシャになりたくないよ」
私の体が動くなら、ユウタに駆け寄り、「大丈夫?」と声をかけ、優しく抱きしめてあげたかった。せめてユウタが私に触れてくれたなら、代わりに泣いてあげられるのに。
どれも叶わない私ができるのは、ユウタを黙って見守ることだけだった。
「なんでなみだ止まんないの? やだ。泣きつづけたらハンザイシャになっちゃうのに。いやだ! 泣きやめ! 泣きやめ!」
ユウタは自分の太ももを、拳で何度も何度も殴っている。
「いたい、いたいよ……。もう泣きたくないのに……」
私に声があったらよかったのに。私の手が、足が、動けばいいのに。
どうしてこんな社会になってしまったんだろう。こんなに優しい子が苦しまなければならない社会なんて、いったい誰の理想なのだろう。
「今日がまんできなくて泣いちゃったら、先生に『ゆうたくんはいつまでもネガティブなままだね。このままだとハンザイシャになっちゃうよ』って言われちゃった。ネガティブな人は将来、ヒトゴロシとかドロボウとかのハンザイシャになるんだって。ぼく、ハンザイシャになりたくないよ」
私の体が動くなら、ユウタに駆け寄り、「大丈夫?」と声をかけ、優しく抱きしめてあげたかった。せめてユウタが私に触れてくれたなら、代わりに泣いてあげられるのに。
どれも叶わない私ができるのは、ユウタを黙って見守ることだけだった。
「なんでなみだ止まんないの? やだ。泣きつづけたらハンザイシャになっちゃうのに。いやだ! 泣きやめ! 泣きやめ!」
ユウタは自分の太ももを、拳で何度も何度も殴っている。
「いたい、いたいよ……。もう泣きたくないのに……」
私に声があったらよかったのに。私の手が、足が、動けばいいのに。
どうしてこんな社会になってしまったんだろう。こんなに優しい子が苦しまなければならない社会なんて、いったい誰の理想なのだろう。