『どのようにしてこの病気に罹るのか、分かっていないのが実情です』
 「お父さん」
 「ん、なんだ?」
 家に帰ってきた後、泣き疲れたのか、宏太はすぐに布団で寝てしまった。僕は、お父さんが作ってくれた夕飯を食べながら、ダイニングテーブルでお父さんと向き合っている。
 「ちょっと言いにくいんだけれど」
 「うん。お父さんに、何でも話していいんだぞ」
 「宏太がさ、どうやらいじめられているらしいんだ」
 「そうか。それは、許せないな」
 あまり驚いていないお父さんを正面に捉え、僕は狼狽える。
 「知ってたの?」
 「いや、この頃、宏太はあまり元気がなかったじゃないか。だから何か隠し事をしているのかもしれないな、って思ってたんだ」
 僕も、宏太の元気があまりないことには気がついていた。ただ、宏太は少々臆病なところがあるので、ふとしたことで、すぐ落ち込んでしまう。今回も何か小さなことで悩んでいるのだろう、数日経てば元気になるだろう、と思っていた。
 「実はな、」
 「うん」 
 「宏太が俺に相談してきたんだよ」
 「相談? いつ?」
 「三人で、布団に横になっている時だ。和弥はもう寝ちゃってたな」
 「そうなんだ」
 「薬飲んだのになかなか眠れなくて困っていた時に、『お父さん、あのね』って宏太が唐突に言ってきたんだ」
 「珍しい」