お父さんが右足でドアを思いっきり蹴ると、ドアが内側へと倒れ、部屋の中が露わになった。流石にぼろ過ぎる。
 部屋の中には三人の男性と横になっている宏太がいた。
 宏太の頭には、何か巨大な装置がつけられており、青年とおじいさんが驚いた様子で、こちらに視線を向けていた。……おじいさん、髭面のおじいさん。
――「こっちに来たら、チョコレート食べられるよ」
 それは、宏太と家に帰っている時に話しかけてきた、あのおじいさんだった。
 「おい、宏太! 大丈夫か! おい、目を覚ませ!」
 お父さんが宏太に近づき、頭の装置を取り外して、身体を揺する。
 「へー宏太くんって言うんですねー。宏太くんはお利口さんでねー、この部屋まで連れてきた時にはもう、すやすや眠ってしまいましたよ。だから脅す必要もなかった」
 「おい、宏太に何をした!」
 「えー、ニュース見てないんですかー? 血縁忘却症って知らないんですかー?」
 「う」
 宏太が薄く目を開き、何かを呻いた。その後宏太はゆっくりと身体を起こし、左右を見渡している。
 「宏太! お父さんだぞ! 分かるか?」
 「お、お父さん?」
 「そうだぞ!」
 「……誰?」
 「あはははははは」
 髭面のおじいさんが身体を後ろに反らせながら、下卑た笑い声を立てた。