神奏のフラグメンツ

「だが、このままで終わらせるつもりはないぜ」

慧は決意を示すように言葉を切った。

「行くぜ、観月。俺達の目的を果たすためにも……力を貸してくれ!」

慧は強い瞳で前を見据える。
それは深い絶望に塗(まみ)れながらも前に進む決意を湛えた眸だった。
何一つ連中の思いどおりなど、させてやるものかと。

「もちろんよ」

他に言葉は不要とばかりに、観月は優しい表情を浮かべていた。
二人の誓いはたった一つ。
奏多と結愛を護るためにこの状況を打開すること――一族の上層部の野望を挫(くじ)くために絶望の未来になる連鎖を断ち切ることだ。

「奏多は絶対に死守するさ」
「ええ。奏多様は絶対に護るわ」

慧の確固たる決意に、カードをかざした観月は応えた。

「悪いが、ここから先は行かせねぇぜ」

慧は奏多達が攻撃する猶予を作るように発砲した。
絶え間ない攻撃の応酬。
だが、弾は全て、フォード達の前で塵のように消えていく。

「やれやれ。こんな攻撃、僕達には効かないっていうのに」
「……フォード、油断しちゃダメだよ。あの人達は、ベアトリーチェ様も手を焼いている相手……」

フォードは不満そうにしたが、ビオラは警戒するように表情を曇らせる。
決定打に欠ける連撃。
それでも奏多と結愛の安全さえ確保できれば、慧と観月が懸念する要項が減る。
あとは全力で彼らを引きつけるのみ――けれども致命状態には気をつけながら、慧は観月と連携して次の攻撃に移った。

「さて、ここからが踏ん張りどころだ」

司を始め、『境界線機関』の者達も相応の覚悟を持って、この戦いに挑んでいる。

最優先事項は奏多の身の安全――。

『境界線機関』の者達は今回も、奏多を守護する任務を帯びている。
その守りは固く、そう簡単には隙は見せない。
防衛戦を仕掛ければ、十分に凌ぐことはできるはずだ。

「なんと恐ろしい力だ……」
「不変の魔女、ベアトリーチェ様の配下の力は凄まじい……」

ヒューゴに付き添っていた一族の上層部の者達は眉をひそめる。

「やはり、早々に『破滅の創世』様の記憶を再封印しておいて正解だった」
「女神の配下達が接触してきても、奏多様が『破滅の創世』様の記憶を完全に取り戻すことはない」

数多の世界の可能性を取り込んだこの世界で繰り返される、『破滅の創世』という神の加護を用いた実験と解析。
その過程で顕現する神の配下達という存在は、一族の上層部にとって看過できないものになっていた。

「ヒューゴ様……そろそろ動かれた方が……?」
「おいおい、よく見ろよ。うまく誘導しているだろう」

ヒューゴの視線の先。
そこには亡くなったはずの一族の上層部の者達が、奏多達に襲いかかろうとしていた。