神奏のフラグメンツ

とはいえ、流石にその時間も有限であり、いずれは彼らの追撃によって目的の遂行は阻まれてしまうだろう。
上層部の者達にとって、『破滅の創世』の配下達の介入はできる限り、避けたいのが本心だ。
『破滅の創世』の配下達に介入されて、女神の配下達と合流されてしまえばこちらの敗北。
そうならず、女神の配下達を帰還させれば、こちらの勝利。
上層部の者達が、暴動を鎮圧するためには迅速な対応が求められた。

「分かりました。では、我々はその支援をさせていただきます。何かありましたら、すぐに奏多様のもとへ駆けつけますので」
「ああ、頼むぜ」

一族の上層部の者達の言葉に、ヒューゴは愉快そうに声を弾ませる。
喜びに満ちたその顔からは、その奥にある感情の機敏までは読みきれない。
無限の力を持つ神の加護を得る方法、数多の世界そのものを改変させることが可能な全知全能の神――『破滅の創世』を手中に収める方法の確立は一族の上層部からすれば『悲願』と言えた。
彼らは数多の世界そのものを改変させることが可能な全知全能の神――『破滅の創世』を維持するためにあらゆる謀略を巡らせている。
だからこそ――戦略で勝機を掴む。
ヒューゴがそう結論づけた矢先――奏多は異変に気づいた。

「慧にーさん、攻撃が来る!」
「ちっ!」

奏多がそう呼びかけた途端、上空から無数の光の槍が降り注いでくる。
ビオラが宙に顕現させた数多の氷の槍を地上に投擲(とうてき)させたのだ。
『破滅の創世』が定めし世界を歪めた一族の者達から、『破滅の創世』を救い出す。
この世界の淀んだ流れを正すべく天に還すために――。
唐突に終わったヒューゴ達との対峙は、すぐに新たな女神の配下達との戦いを生み出しただけだった。
青く染め上がった鍾乳洞。
氷ついた灯は遥か越えて、神の調べを奏でる。
女神の配下達の動きは、奏多達の――そして『境界線機関』の者達の想像とは一線を画していた。
この強靭な猛撃をまともに浴びれば、慧達は瞬時に消滅してしまうだろう。
だが――。
無数の氷の槍が地上に降り注ぐ前に。

「そうはさせるかよ!」
「……っ」

結愛達の視界は一変していた。

「……あっ」

結愛の前に、いつの間にか手をかざした奏多が立っている。
氷の槍。それは寸分違わず結愛達に迫った、はずなのに。
それなのに――。

「……奏多くん」

しかし、それによって伴われる絶大なる威力はこの場にいる者達に与えられることはなかった。
氷の槍が結愛達に命中するその寸前に、奏多が片手でそれを弾いてしまったからだ。