神奏のフラグメンツ

「神の加護は、『破滅の創世』様の権能の一つ。不変の魔女、ベアトリーチェ様がこの世界に来ていることで、その影響を受けないのかもしれないな」
「影響を受けない……?」

確かめるようにつぶやいてから、奏多の眸が驚きの色に変わる。

「ああ。『破滅の創世』様の神としての権能の一つである神の加護を一族の上層部が有している今、『破滅の創世』の配下達は同じ地に長時間、留まることはできない。だが、女神の配下達は違う」

神のごとき強制的な支配力。
一族の上層部が有しているその絶大な力は天災さえも支配し、利用することができる。
それは『破滅の創世』の配下達を同じ地に留めないようにすることも可能だ。
だが、不変の魔女、ベアトリーチェ様がこの世界に来ていることで、女神の配下達には効果がない。
だからこそ、女神の配下達は有利な条件のまま、戦いを繰り広げることができるだろう――。

「一族の上層部の上部の連中が、総出で暴動の鎮圧に当たっても対処できない理由がこれか」
「かなり厄介そうね」

慧の懸念に、透明感のある赤に近い長い髪をなびかせた観月は表情を強張らせる。
神の配下の力は強大だ。
その上、不老不死である。
何かあれば、勝敗の天秤は神の配下達に傾くだろう。

「鍾乳洞という不安定な戦場で、女神の配下の者達が関わっている暴動の鎮圧に当たる。この一件、想像以上に根が深そうだな」

慧は苦々しいという顔でつぶやいた。

「だが、このままで終わらせるつもりはないぜ」

慧は決意を示すように言葉を切った。

「行くぜ、観月。俺達の目的を果たすためにも……力を貸してくれ!」

慧は強い瞳で前を見据える。
それは深い絶望に(まみ)れながらも前に進む決意を湛えた眸だった。
何一つ連中の思いどおりなど、させてやるものかと。

「もちろんよ」

他に言葉は不要とばかりに、観月は優しい表情を浮かべていた。
二人の誓いはたった一つ。
奏多と結愛を護るためにこの状況を打開すること――一族の上層部の野望を(くじ)くために絶望の未来になる連鎖を断ち切ることだ。

「司、これからどうする? さすがにこのまま手をこまねいているわけにはいかねえよな?」

意味深な慧の声音に、『境界線機関』のリーダーであり、一族の冠位の者の一人である司は剣呑に返す。

「当たり前だろう! 俺達は『破滅の創世』様を守護する任務を帯びている!」

司がヒューゴ達を斬り裂く軌道で振るったその重力波は極大に膨れ上がり――それは絶大な威力として示された。

「――くっ。『境界線機関』のリーダー。天井に垂れ下がっている氷柱(つらら)を落とすためにまた、重力波を使いやがって。こちらの動きを封じてくる……」

ルーカスが走らせた瞬間的の感情に、状況は明白となった。