神奏のフラグメンツ

「正直、俺だけでは『境界線機関』の者達や女神の配下達とやり合うことなんてできないしな」
「そもそも、おまえ達、一族の上層部は俺達とやり合うつもりなど、はなからないだろう」

司の意見はもっともだった。
『境界線機関』はこの世界の未来を担う、練度の高い精強な部隊である。
それに今回、司は一族の上層部が有している神の加護に備えて、突入部隊は一族の者達だけで構成している。
猛者ぞろいである『境界線機関』の者達。
ましてや、この場には女神の配下達がいる。
それなのに――ヒューゴの表情には動揺の色は一切見られない。
まるで微笑ましい出来事があったように、楽しげな笑みを堪えていた。

「まあな」

ヒューゴは自分を取り囲む『境界線機関』の者達を改めて見渡した。
それをきっかけに、得物を手にした『境界線機関』の者達が次々に突撃を敢行する。

「おっと! だから、俺はここで死ぬつもりはないって言っているだろう!」

ヒューゴは忌まわしくも見慣れた悪意を視界に収めた。

「くっ……!」

想定外の出来事を前にして、『境界線機関』の者達は驚愕する。
ヒューゴの能力。
攻撃を無効化できる力は、この状況下でも絶対的な強さを発揮した。

「くっ……!」
「我々の攻撃を無効化したのか?」

『不死者にする能力』と『攻撃を無効化する能力』。
一族の上層部の一人であるヒューゴは、二つの厄介な能力を持っている。

「無効化……。それって、僕達の攻撃も防げるのかな?」
「『破滅の創世』の配下達の戦いで、立証済みだぜ」

フォードの問いかけに、ヒューゴは楽しげに答えた。
その偽りなき事実が、フォードの怒りに拍車をかけたのは言うまでもない。

「だったら、防いでみせろよ!!」

その意図を一族の上層部の者達が掴むよりも早く異変が起きる。
電光火花が迸り、烈風怒涛が大気を揺らす。
滅びの音が無慈悲に響き渡り、無数の雷地獄(かみなりじごく)が大地を舐めつくした。
神に背いた者への断罪。
それはたとえ、地にひしめく大軍勢だとしても、ひとたまりもない。

「この攻撃に耐えられるのならな」

フォードが招いたのは無慈悲に蹂躙する雷光。
結愛達には……悲鳴の声の一つすら上げる時間は与えられなかった。
その前にフォードが招いた致命的な雷撃が結愛達へと放たれていたからだ。
だが――。

「……っ」

次の瞬間、結愛達の視界は一変していた。

「……あっ」

結愛の前に、いつの間にか手をかざした奏多が立っている。
雷光の遠撃。
それは寸分違わず結愛達に迫った、はずなのに。
それなのに――。