神奏のフラグメンツ

「ヒューゴ様……」
「俺達の目的は、川瀬奏多様を暴動の現場にお連れすること。それを終えた今、あとは川瀬奏多様の意思を誇示して、『破滅の創世』様のご帰還を諦めてもらうしかないだろう」

一族の上層部の者の戸惑いに、ヒューゴはやれやれと肩をすくめる。

「『破滅の創世』様には、これからも川瀬奏多様として生きてもらわないといけないからな。まあ、俺達はここで死ぬつもりはないから、できる限りの揺さぶりをかけさせてもらう」

ヒューゴは薄く笑みを浮かべて言った。

「しかし、どうやって……」

一族の上層部の一人が深刻な面持ちで、懸念材料を告げる。

「そんなの、決まっているだろうさ」
「……どういうことでしょうか?」

一族の上層部の者達の躊躇いに、ヒューゴは愉快そうに笑んだ。

「『破滅の創世』様の意思は決して変わらない。だが、川瀬奏多様の意思は違う。それをこの場で示していただければいいだけの話だ」

ヒューゴは即座に、今後の方針を一族の上層部の者達に伝える。

「『破滅の創世』の配下達が再び、介入してくる前にな」

神の加護によって、『破滅の創世』の配下達は同じ地に長時間、留まることはできない。
現状で、ヒューゴ達が、『破滅の創世』の配下達の裏をかくことができる唯一の方法。
とはいえ、流石にその時間も有限であり、いずれは彼らの追撃によって目的の遂行は阻まれてしまうだろう。
上層部の者達にとって、『破滅の創世』の配下達の介入はできる限り、避けたいのが本心だ。
『破滅の創世』の配下達に介入されて、女神の配下達と合流されてしまえばこちらの敗北。
そうならず、女神の配下達を帰還させれば、こちらの勝利。
上層部の者達が、暴動を鎮圧するためには迅速な対応が求められた。

「分かりました。では、我々はその支援をさせていただきます。何かありましたら、すぐに奏多様のもとへ駆けつけますので」
「ああ、頼むぜ」

一族の上層部の者達の言葉に、ヒューゴは愉快そうに声を弾ませる。
喜びに満ちたその顔からは、その奥にある感情の機敏までは読みきれない。
無限の力を持つ神の加護を得る方法、数多の世界そのものを改変させることが可能な全知全能の神――『破滅の創世』を手中に収める方法の確立は一族の上層部からすれば『悲願』と言えた。
彼らは数多の世界そのものを改変させることが可能な全知全能の神――『破滅の創世』を維持するためにあらゆる謀略を巡らせている。
だからこそ――ヒューゴは戦略で勝機を掴む。