神奏のフラグメンツ

「はううっ、好きな人と一緒に戦うっていいですね。世界が変わるんです。戦うことが怖くても、奏多くんが傍にいるだけで勇気が湧いてきます!」

奏多の傍にいるだけで、甘く優しい幸福に満たされる。
ふわりと色とりどりの色彩が、結愛の胸中を包み込む。
女神の配下達との戦闘による惨状は想定以上だった。
それでも、戦闘は激しいものになっていた。
『一族の上層部』側も、相当な戦力を投入していたことが伺える。
暴動の現場である鍾乳洞。
それは今この時の世界において、もっとも人々の興味を集める場所と言えるかも知れない。

「よぉ、おまえら、生きているか?」
「ヒューゴ、連れてくるのは『破滅の創世』様だけじゃなかったのかよ」

ヒューゴのその問いかけに――応えたのは一族の上層部の上部の一人、ルーカスだった。

「仕方ないだろう。こちらは『境界線機関』の奴ら以外にも、『破滅の創世』の配下の幹部が三人いたんだからな」

ヒューゴの率直な物言いに、ルーカスはその唇に「確かに」と純粋な言葉を形取らせた。

「おまえらこそ、暴動の鎮圧にいつまでかかっているんだよ」
「女神の配下達、そして別の世界から来た者達が厄介なんだ」
「それは凄まじいねぇ」

ルーカスの苦渋のつぶやきに、ヒューゴは愉快そうに笑んだ。

「なるほどな。神の加護は、『破滅の創世』の配下達だけということか」

その言葉の真意を理解した慧は得心した。

「……慧、どういうこと?」

瞳に強い眼差しを宿した観月は慧を見つめる。

「神の加護によって、『破滅の創世』の配下達は同じ地に長時間、留まることはできない。現状で、ヒューゴ達が、『破滅の創世』の配下達の裏をかくことができる唯一の方法。だが、女神の配下の者達までは、影響を与えることができないってわけさ」
「えっ……!」

何処か吹っ切れたような顔をして言う慧の顔を観月は凝視した。

「まぁ、一族の上層部が有している力は現状、『破滅の創世』の配下達限定の能力だろうな」

慧が苦々しいという顔で語った話に、観月は絶句する。
混乱は治まることはなく、むしろ深まっていた。

「つまり、一族の上層部が有している、同じ地に留めないようにする力は、女神の配下達には効かないってこと?」
「そういうことさ」

それはただ事実を述べただけ。
しかし、慧の言葉は、奏多と結愛には額面以上の重みがあった。

「神の加護は、『破滅の創世』様の権能の一つ。不変の魔女、ベアトリーチェ様がこの世界に来ていることで、その影響を受けないのかもしれないな」
「影響を受けない……?」

確かめるようにつぶやいてから、奏多の眸が驚きの色に変わる。