神奏のフラグメンツ

「……不変の魔女、ベアトリーチェか。あいつらが女神の配下なのは間違いないな」
「そうね」

慧の確信めいた言葉に、観月は同意しつつも不安を零す。

「でも、この状況で……もし、『破滅の創世』の配下達が現れたら――」

その可能性は、観月の心胆を寒からしめた。
『破滅の創世』の配下達は誰よりも何よりも、一族の者に激しい悪意と殺意を振りまいていた。
『破滅の創世』の配下達は、『破滅の創世』である奏多を連れていこうとしている。
それを確実に成し遂げるために、奏多の『破滅の創世』としての記憶を完全に取り戻そうとしていた。
それが今の戦場の様相。
だが、そこに奏多の――『破滅の創世』の神意を加味すれば、最悪の事態が待つ。

「それが何を指していようともな」

それでも慧は握る銃の柄に力を込める。
視線を決して、フォード達から外さずに弾丸を撃ち込む。

「……まぁ、今の俺達ができることは二つ。暴動を止めること、そして奏多を守ることだけさ」
「……そうね」

世界への影響を止めるためにも、女神の配下の者達からこの世界を守る……それが、今の慧と観月にさし迫りし事態であった。

「慧にーさん、今度は向こうから攻撃が来る!」
「ちっ!」

奏多がそう呼びかけた途端、上空から無数の光の槍が降り注いでくる。
ビオラが宙に顕現させた数多の氷の槍を地上に投擲(とうてき)させたのだ。
『破滅の創世』が定めし世界を歪めた一族の者達から、『破滅の創世』を救い出す。
この世界の淀んだ流れを正すべく天に還すために――。
唐突に終わったヒューゴ達との対峙は、すぐに新たな女神の配下達との戦いを生み出しただけだった。
青く染め上がった鍾乳洞。
氷ついた灯は遥か越えて、神の調べを奏でる。
女神の配下達の動きは、奏多達の――そして『境界線機関』の者達の想像とは一線を画していた。
この強靭な猛撃をまともに浴びれば、慧達は瞬時に消滅してしまうだろう。
だが――。
無数の氷の槍が地上に降り注ぐ前に、その間にまばゆい閃光がほとぼしる。

「そうはさせるかよ!」

奏多が事前に、不可視のピアノの鍵盤のようなものを宙に顕現させて鍵盤を弾いていたのだ。
青い光からなるのは音色の堅牢(けんろう)堅固(けんご)な盾。
その彼なりの極致は光の槍を弾いていく。

「続けて行きますよ! 降り注ぐは氷の裁き……!!」

氷塊の連射が織り成したところで、結愛は渾身の反攻を叩き込む。
瞬時に、氷気が爆発的な力とともに炸裂した。

「大丈夫か、結愛」
「はい、奏多くん」

奏多と結愛は会話を交わすことで、感謝の念と次なる連携を察し合う。