神奏のフラグメンツ

水が流れる洞内を突き進んで、鍾乳洞の奥へと向かった先で――奏多は異変に気づいた。

「慧にーさん、攻撃が来る!」

奏多がそう呼びかけた途端、通路の向こうから無数の光撃が飛んでくる。
彼らが招いたのは無慈悲に蹂躙する光。
結愛達には……悲鳴の声の一つすら上げる時間は与えられなかった。
その前に彼らが招いた致命的な光撃が、結愛達へと放たれていたからだ。
だが――。

「……っ」

次の瞬間、結愛達の視界は一変していた。

「……あっ」

結愛の前に、いつの間にか手をかざした奏多が立っている。
光撃の遠撃。
それは寸分違わず結愛達に迫った、はずなのに。
それなのに――。

「……奏多くん」

しかし、それによって伴われる絶大なる威力は、この場にいる者達に与えられることはなかった。
膨大な光撃が、結愛達に命中するその寸前に、奏多が片手でそれを弾いてしまったからだ。

「みんな、大丈夫か?」
「はい、奏多くん」

結愛達の身に唐突に訪れた窮地。
しかし、それは奏多が手をかざしたことで危機を脱していた。

「奏多、助かったぜ」
「本当に凄まじい力ね」

慧の言葉に呼応するように、観月は眸に不安の色を堪える。

「尾行されていたのか。どうやら、暴動の現場はここみたいだな」

視線を張り巡らせた司は、置かれた状況を重くみた。

「なるほど。あれが、今の『破滅の創世』なんだね」

不意に、この場にそぐわない朗らかな声が響く。
慧と観月が慌てて振り向くと、そこには二つの影があった。
その一人は――。

「やれやれ。一族の者達を護るなんて、ベアトリーチェ様が連れ戻すのに苦戦されているわけだ」

幼い男の子だった。
まるで陽光を思わせるような黄金色の髪は、どこか幻想的に感じられる。
青い瞳は穏やかな色合いに反して、強い意思を秘めてこちらを睨んでいた。
そして、もう一人は――。

「ベアトリーチェ様……。わたし達が反旗を翻したことを怒っているのかな……」

幼い女の子だった。
まるで陽光を思わせるような黄金色の髪と青い瞳は、空の色のように感じられる。
気が強そうな男の子に反して、女の子は伏せがちなおとなしそうな雰囲気だった。
瓜二つの彼らの容姿は、とても愛らしいと表現できるだろう。

「彼らが不変の魔女、ベアトリーチェの配下、フォードとビオラか……」

彼らの姿を認めてから、奏多はぽつりとつぶやいた。
女神に反旗を翻した双子の幹部、フォードとビオラ。
後の転換を振り返るなら、この時こそが、女神の配下の者達との戦いの幕開けとも言えた。