神奏のフラグメンツ

喜びも束の間、慧は確認するように置かれている状況を踏まえる。

「何とか、ここまで来れたな」
「ああ。だが、ここは安全ではない。女神の配下達が待ち構えている可能性がある」

司は警戒を示すように言葉を切った。
周りの景色が、妙に寒々しいものに思える。
まるで張り詰めた緊張感に身震いするようだ。
この状況は、誰かの悪意に彩られて作られているような、そんな予感さえも感じられる。

「それにしても……双子の幹部か。フォードとビオラ。どちらも厄介そうだな」

司は、女神の配下達の手強さを肌で感じ取っていた。
奏多達の姿を見やりながら、一族の上層部、そして女神の配下達と相対した時の行動について、道すがらの相談を開始した。

「今のところ、『破滅の創世』の配下達は追ってきていない。さすがに、鍾乳洞の奥で待ち構えているとは思えないが、用心に越したことはない。『破滅の創世』の配下達の手の内はまだ、探れないが、少なくとも、奏多様と此ノ里家の者を狙ってくるのは間違いないな」

司がこれまでの状況から、そう推測を口にする。

「つーか、どちらも幹部なのは厄介だな。『破滅の創世』の配下達と女神の配下達が手を組んだら、大変なことになりそうだ」
「本当ね」

慧と観月は底の知れない、神の配下達の力に改めて畏怖した。

「まぁ、『蒼天の王』アルリットと不滅の王レン、忘却の王ヒュムノスはしばらく戻ってくることはなさそうだけどな」

ひりつく緊張が慧の首元を駆け抜けて行く。
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。

「とにかく、急ごう。ここで女神の配下達に襲われては元もこうもない」

事は急を要すると、司達『境界線機関』の者達は鍾乳洞の奥に突き進む。

「『破滅の創世』の配下達と女神の配下達の狙いは俺だ。何とかしないと……」

戦局を見据えていた奏多は置かれた状況を重くみる。

「女神の配下達の狙いは奏多様。恐らく、何らかの形で接触してくるわね」

観月は水がひたたり落ちる音に緊張を走らせる。
今は、『破滅の創世』の配下達の追っ手を振り切っている。
とはいえ、あくまでこれは超常の領域にある『破滅の創世』の配下への目眩まし程度。
倒すを確約するものではなく、どれほど妨げられるのかも未知数。

「一族の上層部の者達は、この状況をどうするのかしら……?」

そう口火を切った観月は懸念を眸に湛えたままに重ねて問いかける。

「このまま、奏多様を暴動の現場でお披露目するつもりなのかしら?」
「その可能性は高いな。この状況になることを予め、推測していた、と考えるべきだ」

状況を踏まえた慧はそう判断する。
一族の上層部の矜持。
その悪辣なやり方を紐解けば、全てが合致したからだ。