神奏のフラグメンツ

「とにかく、暴動の現場に急ごう。下手に詮索すると危険な感じがするからな」

司の意見はもっともだった。
『境界線機関』はこの世界の未来を担う、練度の高い精強な部隊である。
それに今回、司は一族の上層部が有している神の加護に備えて、警護部隊は一族の者達だけで構成している。
猛者ぞろいである『境界線機関』の者達相手に、この場にいる一族の上層部の者達のみで抗するのは分が悪い。
それなのに――一族の上層部の者達の表情には動揺の色は一切見られなかった。
まるで微笑ましい出来事があったように、穏やかな笑みを堪えていた。

「暴動の現場に着くまで、この緊迫した状況が続きそうだな」

あまりに複雑すぎる想いに苛まれて、奏多は表情を曇らせる。
神の魂の具現として生を受けたこと。
尋常ならざる力を持つことは同時に尋常ならぬ運命を背負うことになるのだと、奏多は身を持って知ってしまったから。

「よし、暴動の現場に向かおう」

司の号令の下に、暴動の現場へと多くの意志が踏み込む。
過去を乗り越えるために、暴動の現場に向かおうとする者。
一族の上層部の本部の内部の把握を心に定めている者。
その事情は様々だろうが――とにかく誰も彼も暴動の現場へ向かう心算なのは間違いなかった。

「思っていたよりも時間を取られたな……。それだけ、『破滅の創世』の配下達の猛攻が激しくなっているっていうことかもな」
「暴動の現場でも、『破滅の創世』の配下達が襲ってこないとは限らないわ」

ヒューゴ達の案内のもと。
慧と観月は後方の奏多と結愛を守りながら、目的地へと足を進める。
荒れた地を歩きながら、観月は改めて切り出した。

「司は、一族の上層部の本部には何度も足を運んだことがあったわね」
「ああ。もっとも『境界線機関』の中で、何度も本部に足を運んだことがあるのは俺くらいだ」

観月の的確な疑問に、司は渋い表情を見せる。

「一族の上層部は『破滅の創世』様の神としての権能の一つである『神の加護』を有している。その力によって、今まで一族の上層部の本部は秘匿されていたからな」

だからこそ、一族の内情に詳しい『境界線機関』のリーダーである司は本部の裏事情を知っていた。
一方、荒れた地をきょろきょろと見渡していた奏多と結愛を、一族の上層部の者達が誘導する。

「皆様、そちらではありません。暴動の現場はこちらですよ」
「結愛、行こう!」
「はい、奏多くん」

奏多の呼びかけに、結愛は意を決して暴動の現場へ向かう。