神奏のフラグメンツ

「だから、俺はここで死ぬつもりはないって言っているだろう! 俺達はおまえ達と違って、女神の配下達の情報を知り得ているんだからな!」
「なっ!」
「情報だと?」

想定外の出来事を前にして、慧と司は驚愕する。

「女神の配下達の情報……?」
「ほええ、それはすごい」

奏多と結愛は混乱する頭で、どうにか言葉を絞り出す。

「ちっ。既に、これから戦う相手のことを知っているわけか」
「女神の配下達……。どんな存在なの……」

慧と観月の反応も想定どおりだったというように、ヒューゴの表情は変わらない。

「この世界に来ている女神の配下達は、どちらも『幹部』だ」

まるでパズルのピースがはまっていく感覚。
ヒューゴが語った事実は、一族の上層部が今も暴動を止められない理由でもあった。

「一人はフォード。小さな男の子のような容姿をした幹部だ。もう一人はビオラ。こちらは小さな女の子のような容姿をした幹部だ。双子のような容姿だから、会えばすぐに分かると思うぜ」
「双子の幹部……」

その言葉は、奏多の心胆を寒からしめた。
だが――。

「双子、すごいです!」

ぱあっと目を輝かせた結愛の言い分に、奏多は途方に暮れたようにため息を吐いた。

「すごいのか?」
「ほらほら、今までの幹部さんたちって、みんな、私達より年上の人達ばかりだったんですよ。でも、女神様の配下さん達は、どちらも私達より年下みたいで!」

それが新鮮なのか、結愛はくっーと胸が弾ける思いを噛みしめる。

「イケると思うんですよ! 事情を話せば、私達の話を聞いてもらえると思うんです!」

目標が定まったことで、結愛は熱い意気込みを見せた。

「結愛の考えは、一理あると思うわ」

元気溌剌な結愛の――妹の様子に、観月は満足げな表情を浮かべる。
幼い頃、世界のあらゆることに怯えていた妹は、今ではいつだって勢いで奏多のもとに走って行く。
躊躇うことだって知らない彼女は、どこまでもまっすぐに生きているのだ。
だからこそ、観月が心配になることは多い。

「でも、その可能性は低いと思う。既に、この世界を巡って、暴動が起きている。彼らはこの世界の者達を憎んでいるから、話を聞いてくれないと思うわ」
「ううぅ……厳しいです」

観月の答えに、結愛はしょんぼりと意気消沈する。

「それに女神様の配下達と別世界の者達の狙いは奏多様。暴動の場所で、女神様の配下達が襲ってこないとは限らないわ」

観月の胸中に言い知れない不安が蘇った。

「一族の上層部と女神様の配下達が、私達に何も仕掛けてこないはずはない」

観月は周囲への警戒を強める。