神奏のフラグメンツ

彼らは数多の世界そのものを改変させることが可能な全知全能の神――『破滅の創世』を維持するためにあらゆる謀略を巡らせている。
だからこそ――ヒューゴは戦略で勝機を掴む。

「正直、俺だけでは『境界線機関』の者達や女神の配下の者達とやり合うことなんてできないしな」
「そもそも、おまえ達、一族の上層部は、俺達とやり合うつもりはないだろう」

司の意見はもっともだった。
『境界線機関』はこの世界の未来を担う、練度の高い精強な部隊である。
それに今回、司は一族の上層部が有している神の加護に備えて、突入部隊は一族の者達だけで構成している。
猛者ぞろいである『境界線機関』の者達相手に、ヒューゴのみで抗するのは無謀だ。
ましてや、この場には『破滅の創世』の配下達がいる。
それなのに――ヒューゴの表情には動揺の色は一切見られない。
まるで微笑ましい出来事があったように、楽しげな笑みを堪えていた。

「慧にーさん……!」

奏多は慧のもとに駆け寄ろうとしたが。

「おっと、『破滅の創世』様はこちらだ! 逃がすつもりはないぜ!」

その前にヒューゴが立ち塞がる。

「このまま、俺達が代表して、暴動の現場までお連れする。おまえら、『境界線機関』の者達は、このまま俺達の後に着いてこいよ」

ヒューゴが発したのは、提案でも懐柔でもなく、断固とした命令だった。

「……っ」

有無を言わさない形で、奏多を人質に取られた状況。
思わぬ事態に、司は表情を曇らせる。

「『破滅の創世』様には、これからも川瀬奏多様として生きてもらわないといけないからな」

そう――もうすぐで手が届くのだ。
一族の上層部にとって、唯一無二の願い。

人間として生きたい。
それを奏多が選ぶだけで――。

このまま『破滅の創世』を人という器に封じ込め続け、神の力を自らの目的に利用するという一族の悲願こそがこの世界を救う唯一の方法だと一族の上層部は知っているのだから。

「ヒューゴ。悪いが、俺達は奏多を護る使命を帯びている。このまま、行かせるわけにはいかない」

司を始め、『境界線機関』の者達も相応の覚悟を持って、護衛を行っている。

最優先事項は奏多の身の安全――。

『境界線機関』の者達は今回、奏多を守護する任務を帯びている。
その守りは固く、そう簡単には隙は見せない。
防衛戦を仕掛ければ、十分に凌ぐことはできるはずだ。
だからこそ――。

「悪いが、ここから先は行かせねぇぜ」
「不死のヒューゴ。おまえを逃がすつもりはない」
「……っ。しっこいねぇ」

颯爽と立ち塞がった慧と司の手際の良さに、ヒューゴは舌を巻いた。