神奏のフラグメンツ

「何度も同じ手は通じません」

レンは、ヒューゴの思惑を切り捨てた。
緊急脱出装置がある場所を察知し、即座に破壊したのだ。
矢継ぎ早の展開。
それも唐突すぎる流れに、一族の上層部の者達は顔をしかめる。

「……ヒューゴ様」
「これでいいんだよ。緊急脱出装置の場所を把握されているが、すべてを破壊されていないからな」

一族の上層部の者の戸惑いに、ヒューゴはやれやれと肩をすくめる。

「緊急脱出装置を利用すれば、しばらくは時間稼ぎにはなる。まあ、それが通じなくなっても、俺はここで死ぬつもりはないから、できる限りの足止めをさせてもらう」

ヒューゴは薄く笑みを浮かべて言った。

「しかし、どうやって……」

一族の上層部の者の躊躇いに応えるように、ヒューゴは視線を向ける。
その視線を追った先には――。

「『破滅の創世』様……」

そう告げるアルリットは、明確なる殺意を慧達に向けていた。

「『破滅の創世』様を惑わすこの世界。この世界にもたらされるべきは粛清だよ」

アルリットの胸から湧き上がってくるのは鋭く尖った憤り。
それに応えるように――。

「今、わたし達が遂行することは『破滅の創世』様を拠点にお連れすることだ」

リディアが打突したその瞬間、空間が裂けた。

「愚かなものだ。わたし達を止められると本気で思っているとは」
「ケイ……。今度は確実に消滅させるから」

そう告げるリディアとアルリットは、明確なる殺意を慧達に向けていた。
恐るべきは『破滅の創世』の配下の者。
この場にいる慧達が相手をするには、あまりにも圧倒的すぎた。

「私達がこの場に留まれる時間はあとわずか。早急に対応する必要がありそうです。『破滅の創世』様、ご無礼をお許しください」
「――っ」

レンは手をかざすと、決意を込めた声でそう告げた。
奏多がいる空間に光が満ちていく。
レンはこの行動を持ってして、流れを取り返すつもりだろう。

「分かっていないな」

――だが、そうはいかないと司が素早く動いた。
思わぬ断言に、レンは顔色を変える。

「まだ、何か手立てでも?」

その渦巻く疑問すら、司は予測していたように不敵な笑みを浮かべた。

「言ったはずだ。おまえ達はどう足掻いても、奏多様をお連れすることはできないと」

司が神獣の軍勢を斬り裂く軌道で振るったその重力波は極大に膨れ上がり――それは絶大な威力として示された。
ともに立つ味方には奇跡を、立ちふさがる敵には破滅をもたらす、重力操作能力の本領発揮だった。
そこに神獣の軍勢が迫る。
だが、司を穿つことはできなかった。