神奏のフラグメンツ

「それにしても分かりませんね。彼らは何故、ここまで無駄な努力をするのか……。その行為がこの世界のみならず、数多の世界を危機に晒すことに繋がるというのに……」

戦局を把握していたレンは独り言ちた。

『破滅の創世』の神命が起点となって、この世界の運命は決まっている。
『破滅の創世』の配下達にとって、『世界の命運』は流れる水そのもの。
絶対者である『破滅の創世』のなすがままでなくてはならない。
だからこそ――

「先を選べ、人の子らよ、この世界は滅びに面している。神は真実、正しい存在だ。神の行うことを疑うことは罪だ」
「くっ……!」

『忘却の王』ヒュムノスが投げかけた口上に、司達『境界線機関』の者達は、苦悶の表情を走らせる。
互いの距離の間に流れるのは一触即発の気配。
それでも、司達の戦意は衰えない。
理解にもっとも程遠く。
ヒュムノスの眸は真っ直ぐに司達を捉えてから、拒絶を紡いだ。

「それでも歯向かうというのなら……死せよ塵芥、この場で消し飛ばす」

ヒュムノスが招くのは無慈悲に蹂躙する雷光。
その暴虐の光は排斥の意図もろとも戦車部隊を飲み込んだ。
崇高なる神――尊き主の御座が、罪と偽りに満ちた世界であることが許されるだろうか。
そう訴えるように――。

「拠点。『破滅の創世』の配下達の活動の足場か……」

戦局を見据えていた奏多は、置かれた状況を重くみる。
その時、奏多は異変に気づいた。

「慧にーさん、攻撃が来る!」

奏多がそう呼びかけた途端、上空から無数の光撃が降り注いでくる。
ベアトリーチェが招いたのは無慈悲に蹂躙する光。
結愛達には……悲鳴の声の一つすら上げる時間は与えられなかった。
その前に、彼女が招いた致命的な光撃が結愛達へと放たれていたからだ。
だが――。

「……っ」

次の瞬間、結愛達の視界は一変していた。

「……あっ」

結愛の前に、いつの間にか手をかざした奏多が立っている。
光撃の遠撃。それは寸分違わず結愛達に迫った、はずなのに。
それなのに――。

「……奏多くん」

しかし、それによって伴われる絶大なる威力はこの場にいる者達に与えられることはなかった。
膨大な光撃が結愛達に命中するその寸前に、奏多が片手でそれを弾いてしまったからだ。

「みんな、大丈夫か?」
「はい、奏多くん」

結愛達の身に唐突に訪れた窮地。
しかし、それは奏多が手をかざしたことで危機を脱していた。

「奏多、助かったぜ」
「本当に凄まじい力ね」

慧の言葉に呼応するように、観月は眸に不安の色を堪える。

「またもや、わらわの攻撃を防ぎよった。記憶を失った『破滅の創世』、本当に厄介じゃのう」

身を呈して結愛達を守った奏多の姿を見て、ベアトリーチェは落胆する。