神奏のフラグメンツ

「……っ」

次の瞬間、結愛達の視界は一変していた。

「……あっ」

結愛の前に、いつの間にか手をかざした奏多が立っている。
雷光の遠撃。
それは寸分違わず結愛達に迫った、はずなのに。
それなのに――。

「……奏多くん」

しかし、それによって伴われる絶大なる威力はこの場にいる者達に与えられることはなかった。
膨大な雷撃が、結愛達に命中するその寸前に、奏多が片手でそれを容易く弾いてしまったからだ。

「みんな、大丈夫か?」
「はい、奏多くん」

結愛達の身に唐突に訪れた窮地。
しかし、それは奏多が手をかざしたことで危機を脱していた。

「奏多、助かったぜ」
「本当に凄まじい力ね」

慧の言葉に呼応するように、観月は眸に不安の色を堪える。

「もうここまで来たか。時間稼ぎも、ここまでみたいだな」

視線を張り巡らせた司は、置かれた状況を重くみた。

「不覚を取ったか」
「無念……」

そんな中――リディアと『忘却の王』ヒュムノスが空に姿を現す。

「それは、あたし達も同じ。一族の上層部の者達は始末できたけれど、肝心の『境界線機関』の者達には出し抜かれたからね」

さらに遅れて、アルリット達と神獣の軍勢がやってくる。
奏多達の危機を知った司達の策略によって、アルリット達は出遅れてしまったのだ。
さらに彼女達を追って、上空から次々と高い加速性能を持った高速戦闘機が飛来する。

「だが、理解できないな。この程度でわたし達を足止めできると思っているとは……くっ!」
「厄介……」

だが、戦闘機の動きはリディアとヒュムノスの想像とは一線を画していた。
戦闘機は旋回能力を生かし、高速で飛行していたリディア達の動きを阻害する。

「……足止め? ううん、違う」

その攻防の最中、浮遊し、中空から戦線の把握に務めていたアルリットは気づく。
流れを変えようとするが、高いステルス性能を誇る戦闘機がアルリットを翻弄する。

「リディア。『境界線機関』は、あたし達を足止めすることが目的じゃない。あたし達を分断することだよ」

そう口にしたアルリットは、この数手の攻防だけで、『境界線機関』の者達の思惑を肌で感じ取っていた。
司達は今、完全に個別撃破に徹している。
それは『破滅の創世』の配下達の目を、奏多と結愛から引き離すことを狙ってのもの。
『破滅の創世』の配下の力は強大だ。
その上、不老不死である。
何かあれば、勝敗の天秤はアルリット達に傾く。
だからこそ、司達は焦らない。
彼らは敢えて、アルリット達を分断させることを狙っていた。

『境界線機関』。
自らを『囮』とすることで、『破滅の創世』の配下達と神獣の軍勢を誘導させるという戦術的な利用を用いてきたのである。