神奏のフラグメンツ

「雄飛司。おまえはいつも、間の悪い時に姿を現すな……」

『破滅の創世』の配下達は、同じ地に長時間、留まることはできない。
『破滅の創世』の神としての権能の一つである神の加護。
その力を一族の上層部が有している今、『破滅の創世』の配下達は同じ地に長時間、留まることはできない。
神のごとき強制的な支配力。
一族の上層部が有している、その絶大な力は天災さえも支配し、利用することができる。
それは『破滅の創世』の配下達を同じ地に留めないようにすることも可能だ。
時間制限まで、ヒューゴ達が生き延びていれば、『破滅の創世』の配下達はこの地を去ることになる。
悪戯に時間を消費することがヒューゴの狙いだった。
だが、司達がこの場に現れたことで、作戦を練り直す必要が出てきた。

「くそっ! タイミングが悪すぎる! あと少しだったというのに……!」
「ヒューゴ様!」
「このままでは!」

ヒューゴ達の――特に一族の上層部の者達の混乱は相当なものであった。
しかも――。

「あれは……?」
「ほええ、すごいです。戦車ですよ!」

奏多と結愛が見つめた先には、物々しい戦車が戦場に雪崩れ込んできていた。
突然の闖入(ちんにゅう)者(しゃ)達によって、戦場は荒れる。

「奏多様を守り抜く! ここで何としても食い止めるぞ!」
「くっ……!」

司が、ヒューゴ達を斬り裂く軌道で振るったその重力波は極大に膨れ上がり――それは絶大な威力として示された。
ともに立つ味方には奇跡を、立ちふさがる敵には破滅をもたらす、重力操作能力の本領発揮だった。

世界の未来を担う組織『境界線機関』。
表向き、一族の者達とは協力関係になっている組織。
猛者ぞろいである彼らの存在は、この世界の人々の光明になっていた。

「ここで、何としても食い止めるぞ!」

死と隣り合わせの戦場から得られる経験は、訓練とは違った恐怖を伴うものであるが故なのだろう。
生き残らねばという執着が、『境界線機関』の者達を支配していた。
それは消極的なものではなく。むしろ闘争心に火をつけるものであった。

「間に合ってよかった」
「……まさか、おまえがここに来るとは思わなかったぜ。司」

安堵した慧の声音に、司は汗を拭った。

「この場にいた『境界線機関』の仲間が教えてくれたんだよ。奏多様に危険が迫っているってことを」

それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、余計にヒューゴ達は置かれた状況に打ちのめされる。

「この場に、『境界線機関』の者が紛れていたとはな。雄飛司、思っていたよりも手強いな」

ヒューゴはそのことを見逃していたことを悔やむ。