神奏のフラグメンツ

「何度も同じ手は通じません」

レンは、ヒューゴの思惑を切り捨てた。
緊急脱出装置がある場所を察知し、即座に破壊したのだ。
矢継ぎ早の展開。
それも唐突すぎる流れに、一族の上層部の者達は顔をしかめる。

「ヒューゴ様」
「緊急脱出装置の場所は、完全に把握されているな」

一族の上層部の者の戸惑いに、ヒューゴはやれやれと肩をすくめる。

「やれやれ。時間稼ぎさえ……させてもらえないか。『破滅の創世』の配下達の力は凄まじいねぇ」
「くだらないことを……。時間稼ぎができるとでも思っていたのですか」

平坦な声で、レンはヒューゴの思惑を切り捨てる。
そのまま、無造作に右手を斜め上に振り払う。
本来なら、それだけでヒューゴ達は吹き飛ばされただろう。
だが、ヒューゴは手をかざしたことで、その攻撃をなかったことにしたのだ。

「ふむ……、面白い能力じゃ。だが、わらわ達の邪魔をするのなら消し飛ばすまでじゃな」
「そうですね」

レンの代わりに、ベアトリーチェが動こうとした。
その反応も、想定どおりだったというように、ヒューゴの楽しそうな表情は変わらない。

「ヒューゴ様、このままでは……!」

一族の上層部の者達は一瞬、どうするべきか躊躇う。
だが、その迷った数瞬が、明暗を分ける一線だった。

「分かっていないな」

一族の上層部の者達が動き出す前に――そうはさせないと、『彼』は素早く動いていた。
その声色が降り注いできたのは、真に戯れであったが故か。
それとも――何か別の思惑があってのことか。
その意図を一族の上層部の者達が掴むより早く、戦場は纏う空気を変える。

「おまえ達はどう足掻いても、奏多様をお連れすることはできない」
「なっ!」

舞い降りてきたのは希望の光。
レン達を斬り裂く軌道で振るったその重力波は極大に膨れ上がり――それは絶大な威力として示される。
だが、重力波は周囲を巻き添えにしつつも、レン達には無干渉に通り抜けていく。
しかし、その行為によって、一族の上層部の者達が行おうとしていたことは不発に終わる。
空から降り立ったのは『境界線機関』のリーダーである司だった。

「『境界線機関』のリーダー。何故、ここに?」
「世界会合の会場にいた、『境界線機関』の仲間が教えてくれたんだよ。奏多様達が、ここにいるってことを」

それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、余計にレン達は自身の置かれた状況に打ちのめされる。
だが、それはヒューゴ達も同様だった。