神奏のフラグメンツ

だけど、どうしたらこの状況を改善できるんだろう……。

奏多の思考の海に聞こえてくるのは、レン達が迫る音だ。
余韻に浸るには程遠いと、急ぐように近づいて来る。

「悪いが、奏多も結愛もおまえらに渡すつもりはないさ。ここで食い止めさせてもらうぜ!」

そこに慧の銃口から煌めく陽光を斬り裂くように、乾いた音を立てて迫撃砲が放たれる。
七発ほどの弾頭が放物線を描き、すぐに爆音が轟いた。
絶え間ない攻撃の応酬。
だが、肝心のレン達は、弾が命中する前に全て塵のように消えていった。
慧達の連携攻撃は、『破滅の創世』の配下の者達を退かせる有効打にはならない。
それでも、慧達の猛攻は苛烈さを増していく。

「行くぜ、観月。俺達が前に突き進むためにも……力を貸してくれ!」

慧は強い瞳で前を見据える。
それは深い絶望に塗(まみ)れながらも前に進む決意を湛えた眸だった。
何一つ連中の思いどおりなど、させてやるものかと。

「当然ね」

他に言葉は不要とばかりに、観月は優しい表情を浮かべていた。
二人の誓いはたった一つ。
奏多と結愛を護るために、この状況を打開することだ。

「凄まじいねぇ。まあ、俺はここで死ぬつもりはないから、この場は逃げさせてもらう!」

置かれた状況を踏まえたヒューゴは、即座に逃げの一手を選ぶ。
迷いも躊躇いもない。

「『破滅の創世』様には、これからも川瀬奏多様として生きてもらわないといけないからな」

そう――もうすぐで手が届くのだ。
一族の上層部にとって、唯一無二の願い。

人間として生きたい。
それを奏多が選ぶだけで――。

このまま『破滅の創世』を人という器に封じ込め続け、神の力を自らの目的に利用するという一族の悲願こそがこの世界を救う唯一の方法だと一族の上層部は知っているのだから。
だからこそ、自分から突っ込んでいくなんてもってのほかだ。

「できる限り、時間を稼ぐ必要がある。此ノ里結愛は、そのための重要な要だ」

ベアトリーチェとレン達を、奏多達だけで相手取るには危険すぎる。
それが分かっているからこそ、ヒューゴは敢えて、手を出さない。
好機が到来するのを待つように、距離を取っていく。

「ヒューゴ様」
「これでいいんだよ。緊急脱出装置の場所を把握されているが、すべてを破壊されていないからな」

一族の上層部の者の戸惑いに、ヒューゴはやれやれと肩をすくめる。

「緊急脱出装置を利用すれば、しばらくは時間稼ぎにはなる。まあ、それが通じなくなっても、『破滅の創世』の配下の者達の目は、此ノ里結愛に向いているからな」

ヒューゴは薄く笑みを浮かべて言った。

「しかし、そろそろ暴動の現場に向かわないと……」

ヒューゴの決断を拒むように、一族の上層部の者達は唇を噛む。