神奏のフラグメンツ

「……っ」

次の瞬間、結愛達の視界は一変していた。

「……あっ」

結愛の前に、いつの間にか手をかざした奏多が立っている。
光撃の遠撃。それは寸分違わず結愛達に迫った、はずなのに。
それなのに――。

「……奏多くん」

しかし、それによって伴われる絶大なる威力はこの場にいる者達に与えられることはなかった。
膨大な光撃が結愛達に命中するその寸前に、奏多が片手でそれを弾いてしまったからだ。

「みんな、大丈夫か?」
「はい、奏多くん」

結愛達の身に唐突に訪れた窮地。
しかし、それは奏多が手をかざしたことで危機を脱していた。

「奏多、助かったぜ」
「本当に凄まじい力ね」

慧の言葉に呼応するように、観月は眸に不安の色を堪える。

「またもや、わらわの攻撃を防ぎよった。記憶を失った『破滅の創世』、本当に厄介じゃのう」

身を呈して結愛達を守った奏多の姿を見て、ベアトリーチェは落胆する。

「相変わらず、不変の魔女、ベアトリーチェ様の力は強大だな。『破滅の創世』様が、この場にいたことが生死を分けたってわけか」

ヒューゴは状況を踏まえながらも、完全に置いていかれた状況。
人間を超えた存在が超越の力を振るえば、人間には認識しようがない。
それでも、ヒューゴには思惑がある。

ヒューゴの狙いは、『破滅の創世』の配下の者達を別の目的に目を向けさせること。

だが、あくまでも『破滅の創世』の配下の者達は、『破滅の創世』のために動いている。
そんな彼らの目を向けさせる方法は限られてくる。
奏多以外では、『破滅の創世』の記憶を封印した此ノ里家の者。
強いていえば、奏多の幼なじみの結愛だった。
その執着を利用して、ヒューゴはこの場を乗り切ろうとしていた。

「皆さん、これ以上は行かせませんよ! 私達にとって、奏多くんは大切な存在です!」
「……結愛!」

ヒューゴ達の思惑に乗って、ベアトリーチェ達がこの場に来た。
何とか状況を飲み込んだ結愛は、勇気を振り絞り、奏多の前に立った。

「『破滅の創世』様……!」
「おっと、それ以上は行かせねえぜ!」

そう吐露したレンの前に、慧も立ち塞がる。

「奏多、結愛、ここは任せな!」
「慧にーさん……!」

慧は奏多達がこの場から離脱する猶予を作るようにレンに向けて発砲した。
弾は寸分違わず、レン達に命中するが、すぐに塵のように消えていく。
それでも、慧が歩みを止めることはない。

「結愛、今のうちにこの場から離れよう!」
「はい、奏多くん!」

幾度も生じる猛撃。
奏多は結愛とともに、この場から離脱するために力を振り絞っていた。
とはいえ、ベアトリーチェ達の狙いは、どこまでいっても『破滅の創世』である奏多。
敢えて、火中の栗である慧達を拾いにはいかない狡猾さを具備していた。