神奏のフラグメンツ

だが、『不死者にする能力』と『攻撃を無効化する能力』。
一族の上層部の一人であるヒューゴは、二つの厄介な能力を持っている。
その歴然たる事実を前にして、ヒューゴの取った行動は早かった。

「凄まじいねぇ。まあ、俺はここで死ぬつもりはないから、この場は退かせてもらう!」

置かれた状況を踏まえたヒューゴは、即座に逃げの一手を選ぶ。
迷いも躊躇いもない。

「『破滅の創世』様には、これからも川瀬奏多様として生きてもらわないといけないからな」

そう――もうすぐで手が届くのだ。
一族の上層部にとって、唯一無二の願い。

人間として生きたい。
それを奏多が選ぶだけで――。

このまま『破滅の創世』を人という器に封じ込め続け、神の力を自らの目的に利用するという一族の悲願こそがこの世界を救う唯一の方法だと一族の上層部は知っているのだから。

「……また、緊急脱出装置を使うつもりですか?」

ヒューゴが、奏多をこの場から連れ出すために割って入ってきた――。
その事実を前にして、レンの雰囲気が変わる。
揺れるのは憂う瞳。
それは剥き出しの悲哀を帯びているようだった。

「同じ手は通じないと告げたばかりですが……」

その存在を根絶やしにすることは、『破滅の創世』を救える唯一の方法であるというように――。
そう告げるレンは、明確なる殺意をヒューゴ達に向けていた。

「なら、俺達はその思い込みを利用させてもらうとするかねぇ」

逆に、ヒューゴは喜ばしいとばかりに笑んでいる。

「そうはさせません!」

平坦な声で、レンはヒューゴの思惑を切り捨てる。
そのまま、無造作に右手を斜め上に振り払う。
本来なら、それだけでヒューゴ達は吹き飛ばされただろう。
だが、ヒューゴは手をかざしたことで、その攻撃をなかったことにしたのだ。

「さすがに動くのもままならないが、その分、能力を駆使できるな……」

攻撃を無効化する能力の発動条件は、体力を半分以上削られた時。
ヒューゴはうまく立ち回り、攻撃を無効化する能力を遺憾なく発揮していた。

「ふむ……。どう足掻いても、わらわ達の邪魔をするようじゃのう。ならば、消し飛ばすまでじゃな」
「そうですね」

ベアトリーチェとレンが動こうとした。
その反応も、想定どおりだったというように、ヒューゴの楽しそうな表情は変わらない。

「さすがに不変の魔女、ベアトリーチェ様の力は防げないからな。この場を切り抜けるためには――」

如何に不明瞭な状況でも、答えはそれだけで事足りた。
そう言わんばかりに、ヒューゴが事実をさらりと告げようとしたものの。