神奏のフラグメンツ

「ちっ、容赦ないな……!」
「……なっ」

慧と観月が目にしたそれは、まさに超越の一撃だった。
元々、『破滅の創世』の配下達が繰り出す攻撃は群を抜いて強力であったが――レンがこの瞬間と定めて切り札を投じた、それは神威の如く。
白き光は瞬きて戦場を貫き、ヒューゴはおろか、周囲の慧と観月、一族の上層部の者達すら穿った。

「――っ! ……俺の能力でも、完全には防ぎ切れないか。幹部の力は凄まじいねぇ。だが、川瀬奏多様を渡すわけには……っ!」

ヒューゴは阻止しようともがくが、レンの強靭の一撃を受けた影響で身動きが取れない。

「つーか、どこまでも恐るべき力だな」
「本当ね」

踏みしめるのは、世界会合の時に招かれる会場。
だが、今はもはや、建物すべてが崩壊し、その面影もない。
そんな荒れ果てた野を、慧と観月は駆けていく。
唐突に終わったヒューゴ達との対立は、すぐに新たな『破滅の創世』の配下達との戦いを生み出しただけだった。

「まぁ、不滅の王レンはアルリット達と同じく、『破滅の創世』の幹部の一人だからな」

ひりつく緊張が、慧の首元を駆け抜けていった。

「ふむ。手応えがないのう」
「そうですね」

ベアトリーチェは同意しつつも、レンに改めて直言した。

「しかし、意外じゃな。お主が、そこまで怒りを見せるのは」
「ベアトリーチェ様、取り乱して申し訳ございません」

冷静さを取り戻したレンが、深刻な面持ちで告げる。
苦渋に満ちたその顔からは、その奥にある感情の機敏までは読みきれない。

「……不死のヒューゴ。あなたは思っていたよりも危険な存在のようですね」

ヒューゴの言葉によって、翻弄されてしまった――。
その事実を前にして、レンの雰囲気が変わる。
揺れるのは憂う瞳。
それは剥き出しの悲哀を帯びているようだった。

「『破滅の創世』様、この世界は最も神を冒涜しておりました。故に滅ぼさなくてはならないのです。神のご意志を完遂するために」

その存在を根絶やしにすることは、『破滅の創世』を救える唯一の方法であるというように――。
そう告げるレンは、明確なる殺意をヒューゴ達に向けていた。

「なら、俺達はそれを阻止させてもらうとするかねぇ……」

逆に、息も切れ切れのヒューゴは喜ばしいとばかりに笑んでいる。

「その人間の言葉に惑わされてはいけません。これから何をしようと一族の者の罪が消えるわけではないのです。私達が決して許さないことが、彼らの罪の証明となる」

平坦な声で、レンはヒューゴの思惑を切り捨てる。
そのまま、無造作に右手を斜め上に振り払う。
本来なら、それだけでヒューゴ達は吹き飛ばされただろう。
だが、ヒューゴは手をかざしたことで、その攻撃をなかったことにしたのだ。