神奏のフラグメンツ

「結愛は俺にとって大切な存在だ。絶対に守ってみせる!」

奏多は不撓不屈の意思を示す。
結愛を守るために身体を張って前に出た。

「奏多くんが守ってくれる……」

奏多の名を口にするだけで愛おしさがこみ上げる。
同時に切望する思いが広がった。
奏多に伝えたい想いはたくさんある。
これから長い時を一緒に過ごすたびに、それは増えていくのだろう。

「あの、あの、あのですね」
「結愛……?」

その時、結愛が真剣な眼差しで奏多のもとににじり寄ってくる。
そして、顔を上げて願うように言葉を重ねた。

「……奏多くん、これからも好きでいてくれますか? もし、神様の記憶を完全に取り戻したとしても……あの、あの、私のこと、好きでいてくれますか?」
「当たり前だろ」

奏多が発した言葉の意味を理解した瞬間、結愛の顔は火が点いたように熱くなった。

「はううっ。……もう一回、もう一回!」

妙な声を上げながら、身をよじった結愛が催促する。

「今のって、当たり前だろ、ってやつか……」
「うわああ、すごい……幸せです……。も、もう一回!」
「当たり前だろ」
「きゃーっ」

張り詰めていた場の空気が温まる。
この瞳に映る花咲く結愛の笑顔が春の温もりのように感じられて。
奏多は強張っていた表情を緩ませた。

「つーか、このやり取り、いつまでも続きそうだな」
「結愛のことだから、いつまでも続くと思うわ」

戦乱の中で、慧と観月は弟と妹が紡ぐ温かな光景を見守っていた。
奏多と結愛が抱く永久の想い。
その安らぎが、少しでも永くあることを願って。
しかし――

「……分かりました」

奏多達の光景を目の当たりにしたレンが深刻な面持ちで告げる。
苦渋に満ちたその顔からは、その奥にある感情の機敏までは読みきれない。

「本来なら、『破滅の創世』様のご意志でお戻りになられることが理想でしたが……仕方ありません」

それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、レンは改めて、今の奏多の――『破滅の創世』の置かれた状況に打ちのめされていた。

奏多と結愛の温かな交流。
だからこそ、レンの胸を打つのはあの日の悲劇。
ここは、そこへと通じる道だと痛いほどに思い出す。

「『破滅の創世』様。記憶が戻る前に、無理やりお連れすることをお許しください」
「……っ」

警戒の表情を浮かべた奏多に対し、レンは恭しく礼をした後、小さく口にする。
 
「神である『破滅の創世』様が、人の心を持つこと。それは危険な状態なのです」

レンはあくまでも、奏多の意志を切り捨てた。