神奏のフラグメンツ

「わらわの配下の者は、わらわの意見など、聞く耳持たぬ。だから、こうして、人間と手を組んで暴動など、意味のないことを起こすのじゃな」

ベアトリーチェは腕を組んで不満をもらす。

「世界を変えるのは、人間やわらわの配下の者の一存だけでは決められぬというのに」

破滅をもたらす。
救いをもたらす。
相反するようで、彼女達の中では一致している。
神が示した神命。
それは絶対に成し遂げなくてはならない。
神命の定めを受けて生を受けた配下達にとって、神の存在は絶対者だった。

「レン。お主も、そう思うじゃろう?」
「はい、もちろんです。ですが――」

ベアトリーチェの言葉に、随分と物腰丁寧な仕草でレンは礼をする。

「この世界は、最も『破滅の創世』様を冒涜しておりました。故に、彼らの意思どおり、滅ぼさなくてはならないのです。神のご意志を完遂するために」

その存在を根絶やしにすることは、『破滅の創世』を救える唯一の方法であるというように――。
そう告げるレンは、明確なる殺意を、この世界の者達に向けていた。

「さて、わらわ達を邪魔する者達を滅ぼすとしようかの」

うっとりと笑ったベアトリーチェの頬に朱の色が昇った。
『不変』を意味するその名を有したベアトリーチェは女神である。
状況を手繰りながらも、前線に飛び出すのはあくまでも興味本位と信じるが故だ。

「皆さん、これ以上は行かせませんよ! 私達にとって、奏多くんは大切な存在です!」
「……結愛!」

ヒューゴ達の思惑に乗って、ベアトリーチェ達がこの場に来た。
何とか状況を飲み込んだ結愛は、勇気を振り絞り、奏多の前に立った。

「『破滅の創世』様……!」
「おっと、それ以上は行かせねえぜ!」

そう吐露したレンの前に、慧も立ち塞がる。

「奏多、結愛、ここは任せな!」
「慧にーさん……!」

慧は奏多達がこの場から離脱する猶予を作るようにレンに向けて発砲した。
弾は寸分違わず、レン達に命中するが、すぐに塵のように消えていく。

「結愛、今のうちにこの場から離れよう!」
「はい、奏多くん!」

幾度も生じる猛撃。
奏多は結愛とともに、この場から離脱するために力を振り絞っていた。
とはいえ、ベアトリーチェ達の狙いは、どこまでいっても『破滅の創世』である奏多。
敢えて、火中の栗である慧達を拾いにはいかない狡猾さを具備していた。

「また、慧にーさん達の攻撃を無効化したのか……?」
「ほええ、最悪です。皆さんの総攻撃が効いていないですよ!」

奏多と結愛がじわじわと押し込まれていく中、ベアトリーチェ達の攻撃は徐々に苛烈さを増していく。
ベアトリーチェ達がその気になれば、奏多を連れてこの場から立ち去ることも可能だろう。