神奏のフラグメンツ

「それって、俺達の動き次第で、この世界の命運が決まるってこと……なんだよな」

あまりに複雑すぎる想いに苛まれて、奏多は表情を曇らせる。
神の魂の具現として生を受けたこと。
尋常ならざる力を持つことは同時に尋常ならぬ運命を背負うことになるのだと、奏多は身を持って知ってしまったから。

「奏多様。我々とともに、この場に留まってください。そうすれば、我々が全力を持って、奏多様の身の安全を保証します」
「安全か……」

一族の上層部の一人の申し出に、奏多は眸に戸惑いの色を乗せた。
『破滅の創世』がこの場で、奏多達が紡いだ想いを断ち切るだけならば簡単だろう。
しかし、そこに縋る奏多達の――大切な人達の心の拠り所を奪うことにも繋がるのだ。

「『破滅の創世』の配下達。そして、別の世界の者達とベアトリーチェの配下達の狙いは俺だ。何とかしないと……」

戦局を見据えていた奏多は置かれた状況を重くみる。
『破滅の創世』の配下達に追われている状態で、暴動の地に向かうのは危険だ。
ヒューゴ達はそう結論づけたのだろう。

「『破滅の創世』の配下達の狙いは奏多様。恐らく、すぐにこの地に踏み入れてくるわね。暴動に介入される前に、何とかした方がいいのは確かね」

観月は遠くから響いてくる破壊の音に緊張を走らせる。
今は司達、『境界線機関』の者達が基地の防衛に回っている。
とはいえ、あくまでこれは超常の領域にある『破滅の創世』の配下への足止め程度。
倒すを確約するものではなく、どれほど妨げられるのかも未知数。

「司、俺はおまえの力を信じているぜ。俺達も、この状況を何とかしてみせる」

慧は過ぎ去った、忌々しい日々を思い返す。
一族の過ちによって、数多の世界に多くの傷痕を残した。
人間と神の間に存在する、簡単には埋めることのできない根深い憎悪。
『破滅の創世』の配下の者達は不老不死だ。
それに対抗するために一度、滅した自分を利用する。
不死者。
それが今となっては、自分が生かされているという唯一無二の証。
だが、慧は呪いともいえる宿命に利用されるのではなく、真っ向から立ち向かうことを選んだ。

「まぁ、まずはこの状況を何とかしないとな」
「慧にーさん……」

奏多にそう語りかける慧は揺るがない意思を表情に湛えていた。

――世界を正すために犠牲が付きものだ。

そんな言葉に頷いてはいられない。
未来のために、世界一つ分の犠牲を孕む可能性をこのまま、見過ごせないと。

慧にーさんの言うとおり、まずはこの状況を何とかしないといけないな。

奏多の思考の海に聞こえてくるのは、ベアトリーチェ達が迫る音だ。
余韻に浸るには程遠いと、急ぐように近づいて来る。