「先を選べ、人の子らよ、この世界は滅びに面している。神は真実、正しい存在だ。神の行うことを疑うことは罪だ」
「くっ……!」
『忘却の王』ヒュムノスが投げかけた口上に、司達『境界線機関』の者達とこの場の戦線に加わった軍勢は苦悶の表情を走らせる。
互いの距離の間に流れるのは一触即発の気配。
それでも司達の戦意は衰えない。
理解にもっとも程遠く。
ヒュムノスの眸は真っ直ぐに司達を捉えてから拒絶を紡いだ。
「それでも歯向かうというのなら……死せよ塵芥、この場で消し飛ばす」
ヒュムノスが招くのは無慈悲に蹂躙する雷光。
その暴虐の光は排斥の意図もろとも戦車部隊を飲み込んだ。
崇高なる神――尊き主の御座が、罪と偽りに満ちた世界であることが許されるだろうか。
そう訴えるように――。
「まあ、いいでしょう。リディア、ヒュムノス。一族の上層部の者達に奇襲を仕掛けるのはアルリット達が行います。この場はあなた方にお任せいたします」
「了解」
「神よ、我らの戦いをご照覧あれ」
二人の応答に、随分と物腰丁寧な仕草でレンは礼をする。
大仰に両の腕を広げながら。
「レン。随分、張り切っているようじゃな」
「不変の魔女、ベアトリーチェ様」
ベアトリーチェの言葉に、レンは恭しく一礼する。
「この世界は、最も『破滅の創世』様を冒涜しておりました。故に滅ぼさなくてはならないのです。神のご意志を完遂するために」
その存在を根絶やしにすることは、『破滅の創世』を救える唯一の方法であるというように――。
そう告げるレンは、明確なる殺意をこの世界の者達に向けていた。
「しかしながら、『破滅の創世』様を惑わす者がいます。此ノ里結愛さん。一族の者でありながら、『破滅の創世』様を惑わす危険な存在です」
「ふむ……あの小娘じゃのう」
レンの危惧に、ベアトリーチェは納得したようにうなずいた。
「ベアトリーチェ様の神の力は、必ずや『破滅の創世』様をお救いするための一助となるはずです」
一見すれば非常に温和なようにも感じるが、レンの胸中には一族の者への形容しがたい怒りがある。
殺意の一言で説明できないほど、その感情は深く深く渦巻いていたから。
「つまり、わらわとレンは、あの小娘どもの対処というわけじゃな。『破滅の創世』を、一族の者の手から連れ出す手助けをしようかの」
うっとりと笑ったベアトリーチェの頬に朱の色が昇った。
『不変』を意味するその名を有したベアトリーチェは女神である。
状況を手繰りながらも、前線に飛び出すのはあくまでも興味本位と信じるが故だ。
「くっ……!」
『忘却の王』ヒュムノスが投げかけた口上に、司達『境界線機関』の者達とこの場の戦線に加わった軍勢は苦悶の表情を走らせる。
互いの距離の間に流れるのは一触即発の気配。
それでも司達の戦意は衰えない。
理解にもっとも程遠く。
ヒュムノスの眸は真っ直ぐに司達を捉えてから拒絶を紡いだ。
「それでも歯向かうというのなら……死せよ塵芥、この場で消し飛ばす」
ヒュムノスが招くのは無慈悲に蹂躙する雷光。
その暴虐の光は排斥の意図もろとも戦車部隊を飲み込んだ。
崇高なる神――尊き主の御座が、罪と偽りに満ちた世界であることが許されるだろうか。
そう訴えるように――。
「まあ、いいでしょう。リディア、ヒュムノス。一族の上層部の者達に奇襲を仕掛けるのはアルリット達が行います。この場はあなた方にお任せいたします」
「了解」
「神よ、我らの戦いをご照覧あれ」
二人の応答に、随分と物腰丁寧な仕草でレンは礼をする。
大仰に両の腕を広げながら。
「レン。随分、張り切っているようじゃな」
「不変の魔女、ベアトリーチェ様」
ベアトリーチェの言葉に、レンは恭しく一礼する。
「この世界は、最も『破滅の創世』様を冒涜しておりました。故に滅ぼさなくてはならないのです。神のご意志を完遂するために」
その存在を根絶やしにすることは、『破滅の創世』を救える唯一の方法であるというように――。
そう告げるレンは、明確なる殺意をこの世界の者達に向けていた。
「しかしながら、『破滅の創世』様を惑わす者がいます。此ノ里結愛さん。一族の者でありながら、『破滅の創世』様を惑わす危険な存在です」
「ふむ……あの小娘じゃのう」
レンの危惧に、ベアトリーチェは納得したようにうなずいた。
「ベアトリーチェ様の神の力は、必ずや『破滅の創世』様をお救いするための一助となるはずです」
一見すれば非常に温和なようにも感じるが、レンの胸中には一族の者への形容しがたい怒りがある。
殺意の一言で説明できないほど、その感情は深く深く渦巻いていたから。
「つまり、わらわとレンは、あの小娘どもの対処というわけじゃな。『破滅の創世』を、一族の者の手から連れ出す手助けをしようかの」
うっとりと笑ったベアトリーチェの頬に朱の色が昇った。
『不変』を意味するその名を有したベアトリーチェは女神である。
状況を手繰りながらも、前線に飛び出すのはあくまでも興味本位と信じるが故だ。



