「ひゅんっ」
レイフィスの猛攻をオトネは回避する……
学習する……ここで真正面に反撃しては、
今、回避に成功した猛攻を再びその身で受けることになる。
だが……それを恐れてただ防御に徹している訳にもいかない。
「びゅーん」
オトネはそう言葉にすると……
くの字を描くように、素早く動きレイフィスの正面の進路を避け、
「どんっ」
迫ったレイフィスを右足で捕らえる。
レイフィスはにやりと笑いながら、闘気の宿った左腕でその一撃を受け止め、
今度は反撃に移るレイフィスの右足がオトネを捉える。
軽いオトネが逆に吹き飛ばされる形になり……
さらに……
「戻れ……」
レイフィスのその言葉と共に……
吹き飛ばされているオトネに目に見えない激しいラッシュが襲う。
「大丈夫かっ」
そのさらに吹き飛ばされるオトネの身体を受け止める。
「凄く痛い……」
うっすら涙目でオトネが言う。
今まではオトネが規格外過ぎて気づかなかった。
その擬音でオトネが連想する事を実現させる。
それは今まで対峙してきた連中なら誰も太刀打ちできなかった……
現に目の前のレイフィスでさえ、それを受けた時に吹き飛ばされる形になった……
だが……今は……
闘気の宿った左腕で防がれた時、レイフィスは吹き飛ばされる事なく……
オトネ以上の魔力の前にはその能力は発揮できないということか……
キルエの召喚獣……
炎の玉が複数飛んでくる。
それを結界で防ぎながら……
「っ!?」
そんな張った複数の結界の隙間を縫うように……
「やぁっ!」
目の前にレイフィスが現れ……
容赦なく繰り出される闘気の宿る右腕を残る魔力を両腕に集中させ自分の目の前でクロスさせて一撃を防ぐ。
「びゅーんっ」
オトネが素早く俺とレイフィスの間に割って入る。
「ばぁーんっ」
鉄砲の形どった右手の人差し指をレイフィスに向ける。
その右手の銃口《ひとさしゆび》にレイフィスは右手を向けると……
その銃弾を握りつぶすように右手を強く握った。
改めてライトの名乗る女《にんげん》の恐ろしさを実感する。
彼女《レイフィス》の強さは一度実感している。
実感していたが……ライトと対峙したあの日……
ライトにねじ伏せられた姿を見て……
何処かで自分たちでも通用するんじゃないかと勘違いしていた……
……どうした、諦めるのか?
威勢よく、似合いもしない言葉を放っておきながら……
諦めるのか……?
あの両腕にさえ防がれなければ、オトネの攻撃も通じる。
俺は瞳を忙しく動かして……キルエの召喚獣の攻撃を結界で防ぎながら考える。
「オトネ……両腕《あれ》は俺がどうにかする……だから……」
そうオトネに告げ、俺はレイフィスに向かい突っ込む。
「レス君、気でも狂ったか?」
そうレイフィスは苦笑し、俺の姿を眺めている。
そんな突進する俺を迎え撃つように真正面からレイフィスも突っ込んでくる。
俺はその場に飛び上がると、
周囲の結界を解除し、その全魔力を右腕に集中させ結界を収束させる。
互いの拳がぶつかり合う……
「!?」
レイフィスが信じられないという目に変わる。
レイフィスの右腕の闘気が消滅する……
「びゅーん」
オトネがレイフィスの右側に素早く動く。
「どーーんっ!」
オトネがそのスピードを殺さぬまま放った蹴りをレイフィスは右腕で防ぐが……
その身体は遥か遠くに吹き飛ばされる形になる。
「戻れっ」
その言葉に改めて絶望する……
やっと見出した攻撃手段……
彼女の凶悪なまでの両腕を突破するための……
そう……あくまで彼女の最悪《のうりょく》は時戻し……
追い詰めることなんてできていない……
「なるほど……あの最強が欲するわけか……」
追い詰められてなどいない最凶は不機嫌そうに再び両腕に魔力を宿す。
「ばぁーんっ」
そうオトネが指鉄砲をレイフィスに放つ。
「ちっ!?」
俺に気をとられていたレイフィスがそれをまともに受ける……
「びゅーんっ!」
さらに追い討ちをかけようと、吹き飛ぶレイフィスに迫る。
「どーんっ」
「戻れっ」
同時にオトネとレイフィスが言う。
レイフィスの身体はそのオトネの拳が届くことなく……
レイフィスの身体は元の位置に戻り、
オトネの拳は俺の結界に防がれる。
「……だめか」
レイフィスの身体を俺の結界で囲ってみた……
もしかしたら、時戻しの効果もその結界の中では能力を発揮できないのではないかと思ったが……そう簡単にもいかないようだ。
「……惚けた顔して、良く頭を働かせる、本当に感心するよ」
そうレイフィスが俺に言う。
「……どうして……」
俺のその言葉にレイフィスはきょとんとした顔で……何が?と問う。
「……どうして、闇に身を置いてまで……」
その最凶を実現させたいのか……
「レス君……君には取り戻した過去ってのはあるかい?」
そう少しだけさびしそうに笑いかける。
「私がどう足搔いたところで、やり直せる時間なんてものは限られている」
そうさびしそうに笑い……
「それでも……わたしの身体が限界を迎えても……あの日に戻って……」
何があんたをそんなに……
それでも……それがどんな理由であったとしても……
やり直したい事なんて山積みだ……
そして、同時に二度とやりたくない……
そんなものばかりだ……
そんな事《かこ》に目を伏せられるなら……なんて甘ったれたことばかり考えている。
自分の過去《あやまち》など……責任を取ろうと……時を戻すなど……
その日の結果が違えば今の自分は変わったか?
きっと……定着する場所なんてそう変わりはしない。
気がつけばこうして異世界生活を始めて……
訳もわからず、違った人生を歩むことになって……
それでも……俺の人生など所詮、こんなもん……
すべて凌駕するだけのチート級の能力も無ければ、
他人や自分を守るのもやっとな能力だ。
でも……異世界《こっち》の人生がどうなれば満足だった?
と聞かれれば……案外……別に何も思いつかない。
「……なんて、言えるほど……まだ異世界《こっち》の時間は立ってないけどな」
「過去を見るな……今を見ろ」
そんな脳内の考えをまとた言葉に当然、レイフィスはきょとんとする。
「……どうして……」
その言葉を今度はレイフィスが放つ。
「なぜ……必要以上に干渉する……命乞いするならもっとほかにあるだろ」
そうレイフィスが付け加える。
「自分でもよくわかんねーけど……ゆるせねぇのかな……」
そう返す、言葉の足りない俺の言葉にレイフィスが不服そうな顔をする。
「……あんたみたいな人間を過去を逆手に利用している誰かが……」
その言葉に少しだけ動揺したように……
「……どうして……」
再び、レイフィスが繰り返す。
「……単純に、あんたみたいな美人、利用する奴はゆるせねぇだろ」
そう、苦笑する。
「………どうして………」
繰り返す。
「………どうして……あの人みたいなこと……」
そう寂しそうに……
「………どうして……もう……」
そう悲しそうに……
「……レス君……わたしのモノに……わたしの所に……」
何かを取り戻そうとレイフィスが俺に手を伸ばす。
思わず、手を伸ばしそうになる……
欲張るなよ……
今、お前が助けるべき相手は誰だ?
戦うべき相手は誰だ?
「びゅーん」
オトネが俺とレイフィスの間に入り……
「ばぁーん」
指鉄砲を放つ。
レイフィスがあえて防ぐことなくその一撃を受ける。
戻れの言葉を言わない。
あえて、その痛みを噛み締めるように……
時戻しの力に頼ることなくその拳がオトネを捉える。
「……邪魔だ」
そうレイフィスは呟き……
「見つけた……見つけたよ……先生……」
そう誰かに話しかけるように……
「欲しいもの……見つけた」
そう狂気に満ちた笑みで……
「今……取り戻すから……」
そう再び最凶が俺とオトネの前に立ちふさがる……
レイフィスの猛攻をオトネは回避する……
学習する……ここで真正面に反撃しては、
今、回避に成功した猛攻を再びその身で受けることになる。
だが……それを恐れてただ防御に徹している訳にもいかない。
「びゅーん」
オトネはそう言葉にすると……
くの字を描くように、素早く動きレイフィスの正面の進路を避け、
「どんっ」
迫ったレイフィスを右足で捕らえる。
レイフィスはにやりと笑いながら、闘気の宿った左腕でその一撃を受け止め、
今度は反撃に移るレイフィスの右足がオトネを捉える。
軽いオトネが逆に吹き飛ばされる形になり……
さらに……
「戻れ……」
レイフィスのその言葉と共に……
吹き飛ばされているオトネに目に見えない激しいラッシュが襲う。
「大丈夫かっ」
そのさらに吹き飛ばされるオトネの身体を受け止める。
「凄く痛い……」
うっすら涙目でオトネが言う。
今まではオトネが規格外過ぎて気づかなかった。
その擬音でオトネが連想する事を実現させる。
それは今まで対峙してきた連中なら誰も太刀打ちできなかった……
現に目の前のレイフィスでさえ、それを受けた時に吹き飛ばされる形になった……
だが……今は……
闘気の宿った左腕で防がれた時、レイフィスは吹き飛ばされる事なく……
オトネ以上の魔力の前にはその能力は発揮できないということか……
キルエの召喚獣……
炎の玉が複数飛んでくる。
それを結界で防ぎながら……
「っ!?」
そんな張った複数の結界の隙間を縫うように……
「やぁっ!」
目の前にレイフィスが現れ……
容赦なく繰り出される闘気の宿る右腕を残る魔力を両腕に集中させ自分の目の前でクロスさせて一撃を防ぐ。
「びゅーんっ」
オトネが素早く俺とレイフィスの間に割って入る。
「ばぁーんっ」
鉄砲の形どった右手の人差し指をレイフィスに向ける。
その右手の銃口《ひとさしゆび》にレイフィスは右手を向けると……
その銃弾を握りつぶすように右手を強く握った。
改めてライトの名乗る女《にんげん》の恐ろしさを実感する。
彼女《レイフィス》の強さは一度実感している。
実感していたが……ライトと対峙したあの日……
ライトにねじ伏せられた姿を見て……
何処かで自分たちでも通用するんじゃないかと勘違いしていた……
……どうした、諦めるのか?
威勢よく、似合いもしない言葉を放っておきながら……
諦めるのか……?
あの両腕にさえ防がれなければ、オトネの攻撃も通じる。
俺は瞳を忙しく動かして……キルエの召喚獣の攻撃を結界で防ぎながら考える。
「オトネ……両腕《あれ》は俺がどうにかする……だから……」
そうオトネに告げ、俺はレイフィスに向かい突っ込む。
「レス君、気でも狂ったか?」
そうレイフィスは苦笑し、俺の姿を眺めている。
そんな突進する俺を迎え撃つように真正面からレイフィスも突っ込んでくる。
俺はその場に飛び上がると、
周囲の結界を解除し、その全魔力を右腕に集中させ結界を収束させる。
互いの拳がぶつかり合う……
「!?」
レイフィスが信じられないという目に変わる。
レイフィスの右腕の闘気が消滅する……
「びゅーん」
オトネがレイフィスの右側に素早く動く。
「どーーんっ!」
オトネがそのスピードを殺さぬまま放った蹴りをレイフィスは右腕で防ぐが……
その身体は遥か遠くに吹き飛ばされる形になる。
「戻れっ」
その言葉に改めて絶望する……
やっと見出した攻撃手段……
彼女の凶悪なまでの両腕を突破するための……
そう……あくまで彼女の最悪《のうりょく》は時戻し……
追い詰めることなんてできていない……
「なるほど……あの最強が欲するわけか……」
追い詰められてなどいない最凶は不機嫌そうに再び両腕に魔力を宿す。
「ばぁーんっ」
そうオトネが指鉄砲をレイフィスに放つ。
「ちっ!?」
俺に気をとられていたレイフィスがそれをまともに受ける……
「びゅーんっ!」
さらに追い討ちをかけようと、吹き飛ぶレイフィスに迫る。
「どーんっ」
「戻れっ」
同時にオトネとレイフィスが言う。
レイフィスの身体はそのオトネの拳が届くことなく……
レイフィスの身体は元の位置に戻り、
オトネの拳は俺の結界に防がれる。
「……だめか」
レイフィスの身体を俺の結界で囲ってみた……
もしかしたら、時戻しの効果もその結界の中では能力を発揮できないのではないかと思ったが……そう簡単にもいかないようだ。
「……惚けた顔して、良く頭を働かせる、本当に感心するよ」
そうレイフィスが俺に言う。
「……どうして……」
俺のその言葉にレイフィスはきょとんとした顔で……何が?と問う。
「……どうして、闇に身を置いてまで……」
その最凶を実現させたいのか……
「レス君……君には取り戻した過去ってのはあるかい?」
そう少しだけさびしそうに笑いかける。
「私がどう足搔いたところで、やり直せる時間なんてものは限られている」
そうさびしそうに笑い……
「それでも……わたしの身体が限界を迎えても……あの日に戻って……」
何があんたをそんなに……
それでも……それがどんな理由であったとしても……
やり直したい事なんて山積みだ……
そして、同時に二度とやりたくない……
そんなものばかりだ……
そんな事《かこ》に目を伏せられるなら……なんて甘ったれたことばかり考えている。
自分の過去《あやまち》など……責任を取ろうと……時を戻すなど……
その日の結果が違えば今の自分は変わったか?
きっと……定着する場所なんてそう変わりはしない。
気がつけばこうして異世界生活を始めて……
訳もわからず、違った人生を歩むことになって……
それでも……俺の人生など所詮、こんなもん……
すべて凌駕するだけのチート級の能力も無ければ、
他人や自分を守るのもやっとな能力だ。
でも……異世界《こっち》の人生がどうなれば満足だった?
と聞かれれば……案外……別に何も思いつかない。
「……なんて、言えるほど……まだ異世界《こっち》の時間は立ってないけどな」
「過去を見るな……今を見ろ」
そんな脳内の考えをまとた言葉に当然、レイフィスはきょとんとする。
「……どうして……」
その言葉を今度はレイフィスが放つ。
「なぜ……必要以上に干渉する……命乞いするならもっとほかにあるだろ」
そうレイフィスが付け加える。
「自分でもよくわかんねーけど……ゆるせねぇのかな……」
そう返す、言葉の足りない俺の言葉にレイフィスが不服そうな顔をする。
「……あんたみたいな人間を過去を逆手に利用している誰かが……」
その言葉に少しだけ動揺したように……
「……どうして……」
再び、レイフィスが繰り返す。
「……単純に、あんたみたいな美人、利用する奴はゆるせねぇだろ」
そう、苦笑する。
「………どうして………」
繰り返す。
「………どうして……あの人みたいなこと……」
そう寂しそうに……
「………どうして……もう……」
そう悲しそうに……
「……レス君……わたしのモノに……わたしの所に……」
何かを取り戻そうとレイフィスが俺に手を伸ばす。
思わず、手を伸ばしそうになる……
欲張るなよ……
今、お前が助けるべき相手は誰だ?
戦うべき相手は誰だ?
「びゅーん」
オトネが俺とレイフィスの間に入り……
「ばぁーん」
指鉄砲を放つ。
レイフィスがあえて防ぐことなくその一撃を受ける。
戻れの言葉を言わない。
あえて、その痛みを噛み締めるように……
時戻しの力に頼ることなくその拳がオトネを捉える。
「……邪魔だ」
そうレイフィスは呟き……
「見つけた……見つけたよ……先生……」
そう誰かに話しかけるように……
「欲しいもの……見つけた」
そう狂気に満ちた笑みで……
「今……取り戻すから……」
そう再び最凶が俺とオトネの前に立ちふさがる……