よくわからないが、ようやく決着がついたというのに……
すでにもう一戦やることが確定している。
俺もツキヨも正直ボロボロだ。
このまま2回戦なんて……ってところで、
思わぬ英雄《ヒーロー》が助っ人に来たわけだが、
俺は……結局連戦なんだよな。
「オトネ……」
女がいつの間にかそこに居るもう一人の女生徒を呼ぶ。
ショットカットの白い髪……前髪パッツンの小柄。
赤い瞳で全くこちらには興味なさそうに……
くまの〇ぅ~さんのように、壷のようなものを大事に抱え、中に詰まった蜜のようなものを片手全体を汚してベロベロと舐めている。
「はぁ……」
オトネと呼ばれた女子生徒はため息をついて……
「や……キルエ……返せ」
裏生徒会を名乗ったもう一人はオトネからその壷を奪い取ると、
それを客席の仲間の方に投げ飛ばす。
「返してほしければ、さっさとこいつらを倒せ」
そうキルエと呼ばれた女は言う。
「キルエ=サモン……契約を交わした召喚獣を呼び出す……もう一人は……悪いが初めて見る……クラスは知らぬがお前と同じ一年のようだが……」
そうナイツが俺に言う。
不意に上空に飛ばされた……あの能力……
おそらくはあの一年の方の能力だ。
もちろん、あのキルエという女性の召喚とやらの能力も危険だ。
だが……なんだ……
あのオトネ……という女子生徒からは……
今までに無い……危険というか……やばさを感じる。
「それじゃ、続けて二回戦、始めっ」
ラビから再び試合開始のゴングが告げられる。
「ぱらりら……ぱらりら……」
オトネはお辞儀するように頭を下げた姿勢で両手を翼のようにひろげて、
暴走族のバイクのホーンのようなものを口ずさみながら左右に蛇行しながら走ってくる。
「……なんか、ちょっと可愛いな」
誰よりも危険を感じるその女子生徒にそんな感情が沸いてしまう。
「びゅーんっ」
続けてオトネはそう言葉を放つと……
先ほどのリルト……下手をするとそれ以上のスピードで……
俺とナイツの間を通り抜ける。
身体は全く反応できなかった。
辛うじて二人とも瞳だけが通り過ぎるその小柄な女子生徒を追った。
「あれ……通り過ぎちゃった」
小首を傾げて……
「てへ……ぺろ」
テンション低く小声でそう呟く。
オトネはくるりとこちらを振り返り俺を眺め……唇に指を当てながら何かを考えている。
その指を俺に向けるとこっちに来いと手招きするように指を動かす。
「くいっ」
オトネがそう呟くと……
目の前にオトネが迫っていた。
というより、俺の身体が何かに引っ張られるように彼女の元に引き寄せられた。
「キミが……転入生?」
俺にオトネが尋ねる。
「ふーーーん」
興味があるような無さそうな表情で……
拳を突き出してきたナイツに瞳だけを向けると……
「ピタッ」
そう左のてのひらをむけて呟く。
「くっ!?」
金縛りにあったかのように、ナイツの身体がその場から動かなくなる。
オトネは再び首を傾げ、ナイツを眺め……
「おしおきだよ……」
そう小さな声で呟き……
デコピンの指をつくりゆっくり近づく。
「どーん」
テンション低めにそう呟き、指をはじくと。
実際放たれたデコピンの威力ではありえないほどの勢いでナイツの身体が吹き飛んでいく。
とっさに俺はナイツの背後に結界をはると、結界にぶつかり地面に落ちる。
なにものだ……
だが……俺をあれだけ上空に放り投げるほどの能力……
彼女の能力……それを理解できないと、手遅れになるかもしれない。
「わたしを忘れるなよっ」
炎の精霊だろうか……
キルエは右腕を横に突き出し、その背後には燃え盛る炎に包まれた獣が存在している。
同時に無数の火の玉が飛んでくる。
「モードチェンジ……鉄《くろがね》」
そうナイツが言うと漆黒の盾を自分の前にはり、
俺も、自身の前に全身を隠すだけの結界をはる。
その火の玉をお互い自身の防御能力で防ぐが……嫌な予感がする。
もちろん、俺の結界、ナイツの漆黒の盾が防げないことはないだろう。
ただ……俺は今も眠そうな目でその場に立っているオトネを見る。
「ぱりーん」
オトネはそう呟くと……
「「!?」」
俺の結界、ナイツの漆黒の盾が……割れて砕ける。
いくつかの火の玉をまともに受け、二人とも後方に吹き飛ばされた。
「……言霊?」
俺はそう……呟く。
言ったことを実現させる……?
だが……彼女が先ほどから……そんな発言をしているか?
……さきほどから言っているのは……擬音のような事を言葉にしている……
擬音で連想される事を実現させている?
そんな能力……だが……これまでの彼女の言動。
それにより引き起こされたこと……
オトネは俺に指を向けると……
「ぴょーん」
そう呟くと同時に俺は両耳を塞いだ。
が……次の瞬間、試合前のように遥か上空に身体が浮いていて……
一気に地面に落下する。
その擬音を聞かなければどうにかなるかと思ったが……
再び俺は、ナイツにジャンピングキャッチされお姫様抱っこされながら地に下りる。
ライト、レイフィス……アストリアとは違う規格外ぷりだ。
下手をすれば……彼女には不可能なことは無いのかもしれない……
「どうする、彼女をどうにかしないと……」
そうナイツが俺に言うが……
「どうにか……できるのか?」
そう逆にたずねる。
「となれば……狙うのは……」
一人を倒せば勝利というルール。
彼女の召喚獣とやらの能力も本気だとは思えない。
一体だけとも思えない……だが……
「伝承……」
ナイツがそう言うと……
俺の身体が真っ白な鎧につつまれていく。
「なんか……不思議な感覚だな」
俺はそう呟きながら……
「それじゃ、鉄壁同盟……盾で矛顔負けの一撃を決めてやろうぜ?」
俺はナイツにそう提案する。
「……何を?」
そうナイツが不思議そうに尋ねる。
「取り合えず、盾を作り出すタイミングを合わせてくれ」
そうナイツに告げる。
「……その前に、彼女には一旦退場していてもらわないとな」
そうオトネを見る。
「何か方法が……あるというのか?」
……そうナイツが俺を見る。
「……これがダメだったらゲームオーバーかもな」
そう苦笑しながら……
「あれっ?」
オトネが首を傾げる。
俺の作り出した結界で彼女の全方位を囲う。
彼女はなにやらいろいろと呟くが……やはりうまくいかないようだ。
彼女の言葉が届いている空間でしかその力は発揮されない。
ようするに……今の彼女の言葉は俺の作り出した結界内に限定されているんだ。
「今のうちに……あっちをどうにかするぞ」
そうナイツに告げる。
「相変わらず、悪知恵の働く奴だ」
少し感心したようにナイツが言い……
「了解した……懇親の正義の盾《せいさい》を喰らわすんだったな」
そうナイツが俺に合わせ、一気にキルエに突っ込む。
「ちっ……あの馬鹿、なにして……」
キルエは俺の結界の中で……余り困って無さそうに、
ここからだせーーーという感じで、結界をどんどん叩いている可愛らしい女の子を睨み付け……再び召喚獣に火の玉を飛ばさせる。
鎧をまとっただけ……だが、いつもより身体が軽く、魔力もあふれてくる。
「ナイツ……決めるぜ」
俺はそう叫び合図する。
キルエの召喚獣を左右から挟みこむように位置を取ると……
「「正義《ヒーロー》タイム」」
二人でそう叫ぶ。
ナイツは漆黒の大盾を作り出し、俺は結界を繋ぎ合わせ、真っ白な大盾を作り出す。
そして、お互いその大盾を前方に展開したまま……キルエの召喚獣を左右から挟みこむように押し潰す。
「ぐっ!?」
召喚獣が消滅する……同時にキルエがその場にしゃがみ込んだ。
どうやら、召喚獣が消滅するとその魔力の消費に直結しているようだ。
あれだけのものを召喚しているんだ……ひとたまりもないだろう。
「ぱりーん」
そう呟き……オトネが俺の結界を破り外に出てくる。
最初から……多分、その気になれば……キルエがやられる前に出てこれただろう。
指で鉄砲の形を作って、それをナイツに向ける。
ナイツが漆黒の盾をそのまま彼女に向かって構える……
「ばきゅーん」
彼女がそう呟く。
ピシッという音と……漆黒の盾に小さな銃弾が通ったような穴が開き……
ナイツの左肩の鎧が砕け散り……何が起きたのか……
ナイツが後ろに倒れこむ。
その指がそのまま……俺の方に向く。
……考えられること。
……彼女の力はその擬音により連想されることを具現化させている。
……だが、これまでの能力者の傾向からして……
能力の威力はその能力者の魔力に依存している。
ということは……この能力も彼女の所有する魔力に依存している。
その限界値以上の威力は出せないはずだ。
ならば……自慢の大盾を悪戯のような攻撃だけで破壊された。
俺の結界を意図も簡単に破壊された。
だったら……彼女の能力は?
……考えられる最悪……彼女の魔力がケタ外れだったという事だ。
「キルエ……そこ邪魔」
そうオトネが俺の前でひざをつくキルエに言う。
「ぶんっ」
逆の手で何かを払いのける動作をする。
キルエの身体が客席の前の壁に叩きつけられる。
オトネの指が再び俺に向く。
覚悟を決める……その瞬間……
「……キルエ選手、場外……勝者、レス選手、ナイツ選手です」
ラビの声が響く。
「……あれ?」
オトネは首を傾げ、その手を下げた。
「負けちゃった……てへ……ぺろ」
オトネはテンション低くそう呟き、舌をぺろっと出し。
「やばい……オトネちゃん大目玉だよ……撤退だぁ」
低いテンションで一人そう呟きながら
「ぱらりら……ぱらりらぁ」
お辞儀するような姿勢で両手をひろげ、ふらふらと左右に蛇行しながら、
仲間の居る方向とは逆に走り去った。
拍子抜けするような結末だが……
「助かったのか……」
素直にそう感じた。
「大丈夫か……」
俺はそうナイツに駆け寄る。
「あぁ……盾と鎧を貫通されたが……お陰で身体の方までは届かなかったようだ」
そうナイツが起き上がる。
「何者なんだ……彼女は……」
俺はのん気に走り去っていくオトネを見ながら……
「学園が裏で……違法な能力の研究をしていると聞く……その実験体を投入して来たとするなら……ライトやアストリア級の化け物が現れるのもありえるのかもしれないな」
そうナイツが俺に言う。
見た感じは……普通の女の子。
そんな子まで……利用されている……というのだろうか?
今は……今はただ……疲れた。
早く帰って眠るとしよう。
すでにもう一戦やることが確定している。
俺もツキヨも正直ボロボロだ。
このまま2回戦なんて……ってところで、
思わぬ英雄《ヒーロー》が助っ人に来たわけだが、
俺は……結局連戦なんだよな。
「オトネ……」
女がいつの間にかそこに居るもう一人の女生徒を呼ぶ。
ショットカットの白い髪……前髪パッツンの小柄。
赤い瞳で全くこちらには興味なさそうに……
くまの〇ぅ~さんのように、壷のようなものを大事に抱え、中に詰まった蜜のようなものを片手全体を汚してベロベロと舐めている。
「はぁ……」
オトネと呼ばれた女子生徒はため息をついて……
「や……キルエ……返せ」
裏生徒会を名乗ったもう一人はオトネからその壷を奪い取ると、
それを客席の仲間の方に投げ飛ばす。
「返してほしければ、さっさとこいつらを倒せ」
そうキルエと呼ばれた女は言う。
「キルエ=サモン……契約を交わした召喚獣を呼び出す……もう一人は……悪いが初めて見る……クラスは知らぬがお前と同じ一年のようだが……」
そうナイツが俺に言う。
不意に上空に飛ばされた……あの能力……
おそらくはあの一年の方の能力だ。
もちろん、あのキルエという女性の召喚とやらの能力も危険だ。
だが……なんだ……
あのオトネ……という女子生徒からは……
今までに無い……危険というか……やばさを感じる。
「それじゃ、続けて二回戦、始めっ」
ラビから再び試合開始のゴングが告げられる。
「ぱらりら……ぱらりら……」
オトネはお辞儀するように頭を下げた姿勢で両手を翼のようにひろげて、
暴走族のバイクのホーンのようなものを口ずさみながら左右に蛇行しながら走ってくる。
「……なんか、ちょっと可愛いな」
誰よりも危険を感じるその女子生徒にそんな感情が沸いてしまう。
「びゅーんっ」
続けてオトネはそう言葉を放つと……
先ほどのリルト……下手をするとそれ以上のスピードで……
俺とナイツの間を通り抜ける。
身体は全く反応できなかった。
辛うじて二人とも瞳だけが通り過ぎるその小柄な女子生徒を追った。
「あれ……通り過ぎちゃった」
小首を傾げて……
「てへ……ぺろ」
テンション低く小声でそう呟く。
オトネはくるりとこちらを振り返り俺を眺め……唇に指を当てながら何かを考えている。
その指を俺に向けるとこっちに来いと手招きするように指を動かす。
「くいっ」
オトネがそう呟くと……
目の前にオトネが迫っていた。
というより、俺の身体が何かに引っ張られるように彼女の元に引き寄せられた。
「キミが……転入生?」
俺にオトネが尋ねる。
「ふーーーん」
興味があるような無さそうな表情で……
拳を突き出してきたナイツに瞳だけを向けると……
「ピタッ」
そう左のてのひらをむけて呟く。
「くっ!?」
金縛りにあったかのように、ナイツの身体がその場から動かなくなる。
オトネは再び首を傾げ、ナイツを眺め……
「おしおきだよ……」
そう小さな声で呟き……
デコピンの指をつくりゆっくり近づく。
「どーん」
テンション低めにそう呟き、指をはじくと。
実際放たれたデコピンの威力ではありえないほどの勢いでナイツの身体が吹き飛んでいく。
とっさに俺はナイツの背後に結界をはると、結界にぶつかり地面に落ちる。
なにものだ……
だが……俺をあれだけ上空に放り投げるほどの能力……
彼女の能力……それを理解できないと、手遅れになるかもしれない。
「わたしを忘れるなよっ」
炎の精霊だろうか……
キルエは右腕を横に突き出し、その背後には燃え盛る炎に包まれた獣が存在している。
同時に無数の火の玉が飛んでくる。
「モードチェンジ……鉄《くろがね》」
そうナイツが言うと漆黒の盾を自分の前にはり、
俺も、自身の前に全身を隠すだけの結界をはる。
その火の玉をお互い自身の防御能力で防ぐが……嫌な予感がする。
もちろん、俺の結界、ナイツの漆黒の盾が防げないことはないだろう。
ただ……俺は今も眠そうな目でその場に立っているオトネを見る。
「ぱりーん」
オトネはそう呟くと……
「「!?」」
俺の結界、ナイツの漆黒の盾が……割れて砕ける。
いくつかの火の玉をまともに受け、二人とも後方に吹き飛ばされた。
「……言霊?」
俺はそう……呟く。
言ったことを実現させる……?
だが……彼女が先ほどから……そんな発言をしているか?
……さきほどから言っているのは……擬音のような事を言葉にしている……
擬音で連想される事を実現させている?
そんな能力……だが……これまでの彼女の言動。
それにより引き起こされたこと……
オトネは俺に指を向けると……
「ぴょーん」
そう呟くと同時に俺は両耳を塞いだ。
が……次の瞬間、試合前のように遥か上空に身体が浮いていて……
一気に地面に落下する。
その擬音を聞かなければどうにかなるかと思ったが……
再び俺は、ナイツにジャンピングキャッチされお姫様抱っこされながら地に下りる。
ライト、レイフィス……アストリアとは違う規格外ぷりだ。
下手をすれば……彼女には不可能なことは無いのかもしれない……
「どうする、彼女をどうにかしないと……」
そうナイツが俺に言うが……
「どうにか……できるのか?」
そう逆にたずねる。
「となれば……狙うのは……」
一人を倒せば勝利というルール。
彼女の召喚獣とやらの能力も本気だとは思えない。
一体だけとも思えない……だが……
「伝承……」
ナイツがそう言うと……
俺の身体が真っ白な鎧につつまれていく。
「なんか……不思議な感覚だな」
俺はそう呟きながら……
「それじゃ、鉄壁同盟……盾で矛顔負けの一撃を決めてやろうぜ?」
俺はナイツにそう提案する。
「……何を?」
そうナイツが不思議そうに尋ねる。
「取り合えず、盾を作り出すタイミングを合わせてくれ」
そうナイツに告げる。
「……その前に、彼女には一旦退場していてもらわないとな」
そうオトネを見る。
「何か方法が……あるというのか?」
……そうナイツが俺を見る。
「……これがダメだったらゲームオーバーかもな」
そう苦笑しながら……
「あれっ?」
オトネが首を傾げる。
俺の作り出した結界で彼女の全方位を囲う。
彼女はなにやらいろいろと呟くが……やはりうまくいかないようだ。
彼女の言葉が届いている空間でしかその力は発揮されない。
ようするに……今の彼女の言葉は俺の作り出した結界内に限定されているんだ。
「今のうちに……あっちをどうにかするぞ」
そうナイツに告げる。
「相変わらず、悪知恵の働く奴だ」
少し感心したようにナイツが言い……
「了解した……懇親の正義の盾《せいさい》を喰らわすんだったな」
そうナイツが俺に合わせ、一気にキルエに突っ込む。
「ちっ……あの馬鹿、なにして……」
キルエは俺の結界の中で……余り困って無さそうに、
ここからだせーーーという感じで、結界をどんどん叩いている可愛らしい女の子を睨み付け……再び召喚獣に火の玉を飛ばさせる。
鎧をまとっただけ……だが、いつもより身体が軽く、魔力もあふれてくる。
「ナイツ……決めるぜ」
俺はそう叫び合図する。
キルエの召喚獣を左右から挟みこむように位置を取ると……
「「正義《ヒーロー》タイム」」
二人でそう叫ぶ。
ナイツは漆黒の大盾を作り出し、俺は結界を繋ぎ合わせ、真っ白な大盾を作り出す。
そして、お互いその大盾を前方に展開したまま……キルエの召喚獣を左右から挟みこむように押し潰す。
「ぐっ!?」
召喚獣が消滅する……同時にキルエがその場にしゃがみ込んだ。
どうやら、召喚獣が消滅するとその魔力の消費に直結しているようだ。
あれだけのものを召喚しているんだ……ひとたまりもないだろう。
「ぱりーん」
そう呟き……オトネが俺の結界を破り外に出てくる。
最初から……多分、その気になれば……キルエがやられる前に出てこれただろう。
指で鉄砲の形を作って、それをナイツに向ける。
ナイツが漆黒の盾をそのまま彼女に向かって構える……
「ばきゅーん」
彼女がそう呟く。
ピシッという音と……漆黒の盾に小さな銃弾が通ったような穴が開き……
ナイツの左肩の鎧が砕け散り……何が起きたのか……
ナイツが後ろに倒れこむ。
その指がそのまま……俺の方に向く。
……考えられること。
……彼女の力はその擬音により連想されることを具現化させている。
……だが、これまでの能力者の傾向からして……
能力の威力はその能力者の魔力に依存している。
ということは……この能力も彼女の所有する魔力に依存している。
その限界値以上の威力は出せないはずだ。
ならば……自慢の大盾を悪戯のような攻撃だけで破壊された。
俺の結界を意図も簡単に破壊された。
だったら……彼女の能力は?
……考えられる最悪……彼女の魔力がケタ外れだったという事だ。
「キルエ……そこ邪魔」
そうオトネが俺の前でひざをつくキルエに言う。
「ぶんっ」
逆の手で何かを払いのける動作をする。
キルエの身体が客席の前の壁に叩きつけられる。
オトネの指が再び俺に向く。
覚悟を決める……その瞬間……
「……キルエ選手、場外……勝者、レス選手、ナイツ選手です」
ラビの声が響く。
「……あれ?」
オトネは首を傾げ、その手を下げた。
「負けちゃった……てへ……ぺろ」
オトネはテンション低くそう呟き、舌をぺろっと出し。
「やばい……オトネちゃん大目玉だよ……撤退だぁ」
低いテンションで一人そう呟きながら
「ぱらりら……ぱらりらぁ」
お辞儀するような姿勢で両手をひろげ、ふらふらと左右に蛇行しながら、
仲間の居る方向とは逆に走り去った。
拍子抜けするような結末だが……
「助かったのか……」
素直にそう感じた。
「大丈夫か……」
俺はそうナイツに駆け寄る。
「あぁ……盾と鎧を貫通されたが……お陰で身体の方までは届かなかったようだ」
そうナイツが起き上がる。
「何者なんだ……彼女は……」
俺はのん気に走り去っていくオトネを見ながら……
「学園が裏で……違法な能力の研究をしていると聞く……その実験体を投入して来たとするなら……ライトやアストリア級の化け物が現れるのもありえるのかもしれないな」
そうナイツが俺に言う。
見た感じは……普通の女の子。
そんな子まで……利用されている……というのだろうか?
今は……今はただ……疲れた。
早く帰って眠るとしよう。