街の主要駅からバス一本で20分。
賑やかとまでは行かないけれど、神修がある山奥と比べれば圧倒的に栄えている街中の端の方にまなびの社はあった。
道が整えられた広い鎮守の森は日中は街の人たちのお散歩コースになっているらしい。
機嫌よく歩く柴犬に手を振った私たちは、社頭へと続く分かれ道を歩く。
5分もしないうちに朱色の鳥居が見えて「おっ」と慶賀くんが声を上げ駆け出した。皆もその背中に続く。
鳥居のそばに佇む人影があった。
紫色の袴に汚れのない真っ白な白衣、神職の装束を身につけた白髪の老人だった。
「迷わず来れたみたいやな」
意志の強そうな目を細め、目尻の皺を深くして微笑んだその人。私たちには馴染みのないイントネーションだった。
「まなびの社へようこそ。現宮司の花幡吉祥や。二ヶ月間、しっかり働いてもらうで〜」
のんびりとした口調ながらも背筋がぴんと伸びる威厳がある。
私たちはお互いに顔を見合せたあと、深々と頭を下げた。
「二ヶ月間、よろしくお願いします!」