「交通守お二つで五百円のお納めです」



財布を探り出す参拝客を待つ間、こっそり足元のストーブに手をかざして暖を取る。

床にはホットカーペット足元にはストーブが二台、白衣と緋袴の下にも何枚も重ね着をしているけれど、それでも壁が三面しかない授与所の建物は凍えるほどに寒い。

はい、と手渡された小銭を真っ赤になった手で受け取って「ようお参りでした」と頭を下げる。


ほうと息を吐けば白く染った。


前の参拝客が終われば、次から次に新たな参拝客が授与所の前へ進んでくる。



「巫女さん、この御守って何のやつ?」

「あ、それは学業成就の御守で────」



もう何度繰り返したか分からないその説明は、最初に比べるとスムーズに出てくる。途切れない列に気合いを入れ直し背筋を伸ばした。



師走の最終日、大晦日と呼ばれるその日はお社が一年で一番忙しくなる日だ。

ここは"ほだかの社"、別称を絆架(ほだか)神社。数日前に二学期が終わったその足で、年末年始のアルバイトをするためにここへやって来た。