書類業務に戻っていたサードは、その声を聞くと「おぅ」と答えた。

「次の定期報告会まで時間があるから、ゆっくりでいいぞ」
「ゆっくりはしていられないですよ。その前には、新入生歓迎会がありますから」
「あ~、あれか……」

 あれは、ろくでもないイベントだったような気がする。博士、騎士、魔術師と所属に分かれて競い合うものだったが、競技内容が異色過ぎて理解が難しいうえ、いたるところで喧嘩が起こり怪我人も続出した行事だったと覚えている。

 たとえばリレーと騎馬戦だと、騎士グループが魔女に扮した女装をし、博士グループが騎士の恰好をして持ち慣れない重い剣を背中に背負い、魔術師グループが視界の悪い擦り傷入り眼鏡をかけ老人博士に扮したりした。

 サードは未だ、学生たちが盛り上がるその扮装の重要性については、一体どういう意味があるものなのか理解出来ないでいる。

「委員長は、風紀の後始末でメイン・イベントには参加しなかったから分からないと思うんですけど、一学年生がメインになるイベントがあるんですよ。去年は鬼ごっこだったんですけど、三位までの入賞者は、生徒会員を指名してご褒美がもらえると盛り上がっていましたよ。優勝者はキス、二位は抱擁、三位はホッペにチュー」

 なんだ、それ。全然嬉しくない褒美メニューなんだが?