サードは疲労した思考でぼんやりと思い、ケースを胸ポケットにしまった。

 そのタイミングで、金色の仔猫がくるりと踵を返した。灰色の仔猫が慌てたようにその後を追って、二匹とも茂みの向こうへと消えていってしまう。

「そっか…………、もう帰るのか」

 少し残念には思ったが、二匹なら寂しくないだろう。サードは少しばかり休むことを決めて、そのまま目を閉じた。

 数分でも休めば、身体は元の状態まで回復する。それまで、肌を撫でていく柔らかい風を感じるのもいいかもしれないと思った。

 けれど、実験で痛覚器官をいじられている。だから風の正確な手触りや、温度を感じることは出来ないのも事実だった。

「……ああ、まるで半分偽物みたいに、現実感が薄い世界だ」

 サードは少しの侘しさを、ぽつり口の中にとこぼした。


 それから、どれほど経っただろうか。風に揺られる葉の音を聞いていたサードは、人の気配を覚えて、ふっと目を開けた。

「サード君、こんなところでお昼寝という名のさぼり中?」
「ユ、ユユユユーリス先輩やめましょうよッ」

 目を開けなければ良かった、とサードは後悔した。

 そこには面白そうに目を細めるユーリスと、困り果てた顔のソーマという、生徒会の会計と書記の組み合わせがあった。