それから数分、ようやく超治癒再生が追いついてくれたようだった。再生価値のなくなった血肉が口内に留まる不快感を覚え、サードはそれを草の上に吐き捨てた。

 途端に、どっと疲労感を覚えて、倒れ込むように仰向けに横になった。

 口を押さえていた手に、少量の血が付着している様子が目に映ってぼんやりと眺めてしまう。その時になってようやく、灰色の仔猫と金色の仔猫が、何事かを訴えるように鳴いている声に気付いた。

 力なく目を向けてみると、こちらに寄り添うように顔を覗き込み「にょー」「にゃー」と主張する二匹の姿があった。

 まるでどこか人間みたいな仕草にも見えて、サードはそれをおかしく思いながら、血の付いていない左手を伸ばして二匹の頭をポンポンと撫でた。

「大丈夫、ありがとな。ちょっと疲れただけだ」

 右掌の血をジャケットの内側に擦り落とし、口許に残った血を拭った。内側の胸ポケットから『悪魔の血の丸薬』が入ったケースを取り出して、一粒を口に放り込んで噛み砕く。

 ふと、そばにいる金色の仔猫が、中身の見えないその黒いケースを凝視しているのに気付いた。国の最重要研究機関のマークが銀色の紋様で入れられているから、それが猫の目には珍しいのかもしれない。